Top page Member site Facebook Contact
官と民の壁、職種の壁、年齢の壁・・・
私たちの身の回りにある様々な目に見えない「壁」をCross-overし、
多様な「人財たち」がより良い社会の実現に向けて協働するきっかけを創り出す触媒、
それが官民協働ネットワーク Crossoverです。
     
第15回異業種ディスカッション大会 開催報告


壁を越える力

~ 社会変革の担い手たちのストーリー ~




1.はじめに

「社会変革・組織改革に関する具体的な経験や事例を元に、「自分だったらどうするか」「自分にとってのテーマは何か」を問いかけ、語りかけ、そして、耳を傾けよう。
社会の課題を“他人事”ではなく、“自分事”として考え始める一日」をテーマに開催した今回のディスカッション大会には、年度末、そして3連休の最終日にも関わらず、86名もの皆さんに参加頂きました。

日常生活や仕事だけをしていたのでは会うことが無かったであろう人たちが、立場、年齢、職業、そして国境の壁を越えて集い、社会の様々な課題について各々の経験に基づく問題意識を交し合う…そんな非日常空間を創ることができたのは、参加して下さった皆様、そして会を支えてくれたスタッフのおかげです。
Crossoverのディスカッション大会に関わって下さった全ての皆様に改めて感謝を申し上げます。


2.全体総括

ディスカッション大会は、Crossoverのビジョンとミッションを伝えるCrossover副代表、田中宗介からのメッセージでスタート。
公務を通じて被災地支援・復興や中小企業対策等に関わってきた経験から、社会を支える様々な主体が困難な課題解決に向けて連携することの重要性や、こうした連携を促進する媒体として、業種や官民の垣根を越えてフラットな立場で出会い、語り合うことのできるCrossoverという場の意義を会場の皆さんと共有しました。

ビジョン・ミッションの共有に続き、全体司会を務める植木武志が、会場に対して投げかけたのが「皆さんが、今日Crossoverに参加した目的とは?」、「皆さんにとってのCrossoverの成功の定義とは?」というクエスチョン。
一人ひとりの目的意識を明確にするための問いと向き合い、短い文章に落とし込むための1分間の内省の時間を持ったうえで、グループ・ディスカッションに移りました。

各グループのメンバーは、申込み時に頂いた参加者の希望、グループ毎の人数のバランス、そして所属や性別等の多様性確保に配慮して、スタッフが決定し、事前に参加者の皆さん一人ひとりにお伝えしました。

今回取り上げたテーマは以下のとおりです。

  ケース
プロバイダ―
現在の所属 テーマ Link
1 池田 洋一郎 世界銀行
(財務省から出向中)
国際社会で問題解決・価値創造に貢献できる日本人・日本の組織を創るには?
2 植木 武志 コンサルティング会社 コネなし、カネなし、カンバンなしでも社会起業? ~“今までにない”モノ/サービスの広め方~
3 川合 淳一 合同会社ドリームオン代表/株式会社ブレンドシステムズ代表 仕事や組織の価値を真に高めるIT化を実現するには?
4 斎川 貴代 IT企業 母となって、父となって、働くこと、そして生きること ~草の根からの男女共同参画社会の実現に向けて~
5 城 真範 独立行政法人産業技術総合研究所 官僚はなぜ叩かれる? ~官僚は本当に悪なのか?~
6 武木田 雄大 外務省 縦割りの弊害克服には何が必要か? ~霞が関と永田町の現場から~
7 田中 健一 北京天衛診療所 社会・時代のニーズにあった医療従事者を育てること ~医療側への皆さんの期待~
8 田中 宗介 経済産業省 イイ企業ってどんな企業?? ~地域経済の担い手は、地域の中小企業~
9 田中 里沙 横浜市
(総務省から出向中)
業務効率化でのチャレンジ ~現状維持からは新しい価値は生まれないのでは~
10 柚木 理雄 農林水産省/芸術家の村 イノベーションを起こす国とNGOの協働 ~ソーシャルビジネスラボ、地域活性化の取組みを通じて~

グループ・ディスカッションでは、 “ケース・プロバイダー”を務めるスタッフが、各々の経験を通じて培ってきた問題意識を、直面してきた壁、それを乗り越えるための創意工夫や努力に関する具体的事例とともに議論のたたき台として提示。
その後、スタッフの司会・進行の下、グループ・メンバーの間で、提供されたケースについて感じたこと、同様の壁に直面した経験、その壁を越えるためにとったアクション、そしてこのテーマと向き合うことのそもそもの意義も含め、幅広い観点から意見を交わしました。なお、各グループの議論の詳細は上記表のリンクよりご覧いただけます。

グループ・ディスカッションに続き、各グループの代表から議論のポイントを会場全体に対して発表して頂きました。
多様なテーマに関する様々な論点が伝えられる中で、以下の事柄が、共通するエッセンスとして会場全体で共有されていきました。

○ 社会の課題に対して問題意識を持ち、自分の問題として捉えることで、新たな気付きが生まれる。
○ 問題の本質や、解決のための方策・手段は、業種や官民の違いを超えて、相当程度共通している側面がある。
○ 自分にとっては当然の前提と考える事柄が、立場の異なる人にとってはそうとは限らないことを踏まえ、自分を客観視し他者の立場に立ったコミュニケーションをとる事が、協働による問題解決に向けた第一歩と成り得る。
○ 同様の問題意識を持ち、且つ具体的な行動に移している同志を組織の内外に求め、つながっていくことが、「自分自身が問題解決の主体となろう」というモチベーションを保つうえで不可欠である。


3.今後に向けて

ディスカッション(議論)というと、議題に関する知識を持って相手を説き伏せたり、グループで一定の結論に時間内に到達することが目的となることが多いかもしれません。
しかし、Crossoverのディスカッション大会の醍醐味とは、自分がこれまで持っていたのとは異なる見方や考え方を得ること、同じ問題意識を持ち、互いに鼓舞し合える仲間を見つけること、そして、社会問題を「自分事」として捉え、自分自身が「明日からできることは何か」を考え、行動に移していく力を得ることにあると思います。

今回、スタッフとして約2ヶ月にわたる事前準備、また一参加者として10時間にわたるイベントに参加した私にとって、グループ・ディスカッション、そしてその後夜遅くまで続いた熱気溢れる懇親会や二次会での出会いや対話の一つ一つが、そんな計り知れない価値を持つものでした。
そして、今後もCrossoverに集う多彩な人財たちと共感の環を広げ、協働の絆を深めながら、Crossoverの活動を継続していきたいと考えています。

次回のディスカッション大会は今年7月です。皆さんとの再会を楽しみにしています。



文責:田中里沙(Crossover スタッフ)


Page top


各グループのまとめ


グループ1 : 国際社会で問題解決・価値創造に貢献できる日本人・日本の組織を創るには?

ケース・プロバイダー : 池田洋一郎(所属:世界銀行)
ファシリテーター : 菅原寛広(所属:JETRO)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれと目的意識の共有~

○ 冒頭、10名のグループ・メンバーがペアになり、お互いの名前、所属、ディスカッションに向けての目的意識を共有。その後、各々のペアについて、グループ全体に“他己紹介”。

○ メンバー構成はファシリテーター、ケース・プロバイダーに加え、私塾経営者1名、マナー講師1名、会社員4名(総合電機メーカー、データ通信・情報システム構築、生命保険会社)、大学生(医学部)1名、国際公務員(国連専門機関)職員1名。年齢層は20代:4名、30代:4名、50代:1名、60代:1名。

○ 年齢・職業の多様性に加え、メンバーの職歴、経験も青年海外協力隊経験、産休・子育てと仕事の両立、紛争地域経験、海外でのインターン・留学、途上国BOP(base-of pyramid)層向けビジネス・プランニング、各国大使を招いての定期勉強会等、多彩。

2.問題意識の明確化 ~ なぜ「国際社会で問題解決・価値創造に貢献」する必要があるのだろうか?

○ ケース・プロバイダーより、本件を取り上げる際の問題意識として、
① 日本は国際社会に貢献して初めて自らの繁栄を享受できる「資源希少国」であること、
② グローバル化の進展により、機会もリスクも国境を越え拡大・拡散する時代にあること、
③ 人口減少等により、日本が動員可能なリソースや国内の市場規模がかつてより縮小しつつあること、
④ 新興国の台頭等により国際社会における日本の政治・経済面の相対的プレゼンスが縮小していること
等を提示。

○ これに対し、大阪あいりん地区でボランティア活動をしている学生から「海外の問題解決に貢献することも大切だが、日本国内にある多くの社会問題に無知・無関心である訳にも行かない。どのようにバランスを取れるのだろうか?」、元青年海外協力隊員の会社員からは「常に国際社会での貢献を意識している訳ではなく、今は、自分の身の回り居る人、目の前にある課題に尽くしていくことが、死ぬときに納得のいく生き方だと思っているが、皆さんはどうだろうか?」との問題提起あり。

○ 別なメンバーからは、これまでの仕事を通じて、「日本は、海外で十分に通用・普及し得る技術や、高い調整力、段取力、職業倫理といったソフト面での力を持っているにも拘らず、これらを十分に活かしておらず、勿体無い」、「引退しつつある団塊の世代を日本企業・社会が上手く活かせていないため、韓国や中国に人材が流出している」、「10代、20代に留学や海外でのインターン等を経験した学生が、これらをダイレクトに活かす職種に就けていないケースが目立つ」といった問題意識や危機感が示された。

○ ケース・プロバイダーからは「確かに国内にある諸問題への解決や身の回りの人に尽くすことは尊い。しかし、2008年秋の金融危機の前後で、「カリフォルニアでの住宅ローンのデフォルト」が、「日比谷公園での派遣村」につながったように、今の世の中は、自分の身近な誰かを守り、日本国内の問題を解決するためにも、国際社会や諸外国に意義ある関与をしていくことが欠かせない。多くの日本人にとって、日常生活や仕事をしていたのでは気付きにくい、しかしリアルなつながりを、如何にして見える化していくかが、この問題への意識喚起を図る上でのポイントかもしれない」と指摘。

3.ケースの共有 ~ 自分が実際に見聞きし、経験した成功例・課題は何だろうか?

○ ケース・プロバイダーより、バングラデシュの青年海外協力隊員及が成し遂げた「エコラン・プロジェクト」の成功例、自身が世銀で貢献する上で感じる壁、防災に関する世銀と日本政府との協働事例等をケースに、
① 自らが追求したいテーマを特定すること、
② テーマや思いを積極的に発信すること、
③ 自分自身や周囲のコンテキストを直視する力を高め、「天動説」に陥らないよう注意すること、等を提示。

○ メンバーからは各々の経験から、
① 日本企業・組織の意思決定の遅さ、
② コンプライアンスの過剰重視によるイノベーション意欲の減殺、
③ 採用・昇進におけるMBA取得や協力隊といった海外経験の軽視、
④ 「確実に儲けの出る既存のマーケット」への安住と「リスキーだが将来につながり得る海外マーケット」への低い関心、といった問題事例を共有。

○ また、バングラデシュで一本300円の野菜ジュースを売り込もうとした結果失敗したケースが共有され、その原因を議論。この点、現地の金銭感覚を、自らの感覚として取り込む努力が必要との指摘あり。具体的には、ダッカ市内の市バスの料金が概ね5タカ(5円)程度の物価水準を踏まえれば、300円(300タカ)の野菜ジュースは市バスを60回乗車できる値段。日本の都バスが180円であることを考えると、一般のバングラデシュ人にとって300円の野菜ジュースは、日本人にとって、一本1万円以上する野菜ジュースという事になる。こうした金銭感覚のすり合わせは、単に現地に駐在するだけでは培われない。ターゲットとする一般の市民層が使う交通手段やマーケット等を自分も活用する努力が必要、との意見が出される。

○ 他方、前向きな事例として、組織内で起業家精神を育てるための工夫として、世界銀行内で実施されている「Innovation Award」、途上国でのビジネスチャンスを見極め、育てようという意志を持ったベンチャー起業家や中小企業関係者が集う交流会「ローマの市場にて(http://romanoichibanite.org/)」、新興国でのビジネス展開の前提となるfeasibility studyを支援するJICAの助成金等の情報が共有された他、バングラデシュにおけるITを活用した遠隔地医療のビジネス・モデルが提案された。

○ また、BOPビジネスの対象となる途上国の一般市民や農村地域の人々の生活水準や金銭感覚を最もよく知っている日本人は青年海外協力隊であるとの指摘あり。この関連で、IFC(国際金融公社)の日本人職員がセネガル・ケニア等の青年海外協力隊員と連携して手がける「青年海外協力隊フィールド調査団」が紹介される。http://jocvmr.webcrow.jp/

4.アクションの特定 ~自分が、「月曜日からできる事」は何だろうか?

○ 社会問題を「自分事」として捉えるクロスオーバーの趣旨に鑑み、組織や社会に何かを期待する前に、自分自身が、明日からできることは何か、を議論。メンバー間で共有したポイントは下記3点。
 ① 所属する組織の中で貢献し、実績を作りながらも、違和感を失わずに、自らのテーマを追求すること、“自分の旗”を立てること、
 ② そのために、組織内外で共感できる人―同志、追いかけたい背中―師、を求めること。
 ③ 最近の若者はダメ、オッサンはアタマが硬い、巨大組織は官僚的で駄目、と決め付けず、楽観的な姿勢と好奇心を持つこと。

5.おわりに ~グループ・ディスカッションを振り返って~

○ ディスカッション終了後に各自記入したアンケートに刻まれた各人の想いは以下の通り
・「ローマの市場」とCrossoverのJoint Eventを実現させよう。
・日本も捨てたものではない。真剣に物事を考え、解決策を見つけようとする姿勢が素晴らしい。
・グループ・メンバーの個性や生き方を知ることができ、とても良い時間であった。
・問題意識を持つこと、物事を自分の問題として捉えるの大切さを思い出した。
・「探究心を持ち続けること」、「人とのつながりを大切にすること」の重要性を改めて認識した。
・沢山の気付きを得た。
・立場が違っても感じている問題意識が同じことに興味を持った。自分レベルでできることとして、仲間を増やしていくこと。Crossoverはその一つだが、所属する組織の内外で続けていきたい。
(以上)

文責:池田洋一郎


  



グループ2 : コネなし、カネなし、カンバンなしでも社会起業?

ケース・プロバイダー : 植木 武志(所属:マーケティングコンサルティング会社)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれ~

○ メンバー構成は、ケース・プロバイダー(会社員)・国家公務員1名・会社員2名・経営者1名・行政書士1名・医師1名・学生2名

2.ケースプロバイダーより ~このテーマを掲げた理由~

○ 社会に山積する問題を解決し得るモノ・サービスはあちこちで生まれていることを、現在の仕事を通じて感じている。しかし、それを事業として広めようとした時、直面するのはコネ、カネ、カンバンの問題。社会問題を解決するポテンシャルはあれど、理解されず、顧客がつかず、資金が続かず、消えていくモノ・サービスは多い。

○コネ・カネ・カンバンの無い人は、新しいモノ・サービスを広めることは諦めなければいけないのか?社会問題の解決は、コネ・カネ・カンバンのある人(=大企業、有名大卒、事業の成功者)に任せておけばよいのだろうか?あなたなら、カネ・コネ・カンバンが無いとすれば、どうしますか?

3.議論の流れ

○前半:「社会起業」およびその事業内容について議論
・何を以て「社会起業」とするか?の議論。一般的には、対象は介護、教育、貧困など。主体は、ボランティアやNPOなどの非営利組織がやるものというイメージがある。
・対象を途上国のBOPにするのか、国内の高齢者を対象にするのかで方法論は変わってくるし、どんなモノ・サービスを提供するのか、それが本当に有効なのかでも変わってくる。

○後半:「社会問題を解決するモノ・サービスが決まって、事業を立ち上げた」と仮定して議論
「コネ・カネ・カンバンは同列か?」
・カネは、中小企業向け融資やクラウドファンディングなど今や数多くのサービスがある。カンバンは、立ち上げ当初は無いのが普通であり、如何ともしがたい。しかし、コネの有無は、特に初期は、顧客層にリーチするための有効な手段であり、これが無いとなると事業の存続にかかわってくる。
「では、コネはどう作るか?」
・どんなに「コネがない」人でも、友人や同業者など、「とりあえず話は聞いてくれる人」はいるはず。直接の顧客にはならなくても、「私はこの問題を解決したい!」という熱意が伝われば、紹介やアドバイスをくれるサポーターになってくれるだろう。熱意を伝えるには、自らを包み隠さずどこまで曝け出せるかにかかっているのではないか。

4.グループ・ディスカッションを振り返って~

○ ディスカッション終了後に各自記入したアンケートに刻まれた各人の想いは以下のとおり(抜粋)。
・年代や業種も様々で新鮮な体験でした。
・“社会”起業の方に前半は引っぱられて、本論が短くなったのは残念。
・多様なバックグラウンドの方と議論でき、普段考えることのない知識、視点を伺うことができ、非常に楽しかったです。

5.おわりに ~ケース・プロバイダーの気づき~

○「社会起業」「コネ、カネ、カンバン」という定義があいまいな言葉を用いたため、前半は様々な議論が飛び交った。その中で、「社会起業とは何か?」については、改めて議論したいと思った。

○議論の中で、普通の人は「カネ、コネ、カンバンなんて持ってない」と思いがちだが、実は他の人から見たら「持っている」要素もあるのではないか、という気付きを得た。それは、決して大きなものではないかもしれない。しかし、「全く無い」のと「小さくてもある」というのは大きな違いであり、始めるには十分なものだ。

○「まずは友人」という発言があったが、自分自身が気付かないコネ・カンバンを気付かせてくれるのは、今身近にいる友人達ではないだろうか。
(以上)

文責:植木武志



グループ3 : 仕事や組織の価値を真に高めるIT化を実現するには?~

ケース・プロバイダー : 川合淳一(所属:合同会社ドリームオン代表/株式会社ブレンドシステムズ代表)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれと問題意識の共有~

○ 冒頭、グループ・メンバーがそれぞれ名前、所属、ディスカッションに向けての目的意識を共有。

○ メンバー構成はケース・プロバイダー(自営業)に加え、自営業2名、国家公務員1名、大学教師1名(IT系)、会社員2名(コンサル1名、メーカー1名)、学生1名(商学部)。

○メンバーが日々取り組む業務はIT関係が多いものの、その切り口は、オフショア開発受託事業、情報化社会のまちづくり、企業内での発注業務担当、情報学科の教員、ベンチャーでのインターン、国の情報セキュリティ標準化の担当など多様。

2.問題意識の明確化 ~ITは変革を促すためにあり、変革は仕事や組織の価値を高めるためにある。

○ 冒頭、「激しさをます競争環境化にある企業、一層の効率化が求められる行政にとって、IT化促進の余地は大きい。しかし、変化に対する抵抗、リスクの回避、縦割りといった組織に見受けられる問題がIT化を阻害している。これらを乗り越えるには、何が必要だろうか?」との問題意識を提示。

○ ケース・プロバイダーより韓国の行政によるICT導入事例と、日本の最新事例を比較して紹介。メンバーからは、トレード・オフの関係になりがちな「利便性」と「セキュリティ」のどちらをどの程度優先すべきかに関して、異なる意見が出された。「セキュリティ」について議論を深めた結果、問題が起きた際の責任の所在が、欧米では個人におかれる傾向がある一方、日本では、組織全体(集団)に置かれる傾向が高いことから、リスクをとってイノベーションに取り組むことが難しくなってしまう、という見方が共有された。

○ 続いて、「企業内で既に利用しているITシステムはありますか?」という質問をケース・プロバイダーよりメンバーに投げかけ、それぞれの組織や仕事に活かせる事例があるかを確認した。結果、組織の規模や管理職のリテラシーに強く依存する傾向ことが判明。

○ 例えば、ソフトウェア開発会社の代表から紹介された、「通常業務でチームのモチベーションや効率化の向上に資するグループウェア」に対する、参加者の反応は様々だった。ベンチャー企業での勤務経験がある者からは、「便利そうだ」という共感を得られた一方、大手コンサル会社の参加者からは、「使いたくない人や用途を理解できない人に対しては、無理に導入しなくても良いのではないか」、という意見が出された。年配の会社代表者は「何が良いのか一向に理解ができない」という反応で、「もっと分かりやすいマニュアルや魅力的な画面なら検討しても良い」という受け身の姿勢が見られた。

○ こうした議論を踏まえ、「何のためにITを導入するのか」という目的共有の必要性が確認された。併せて、発注側が、開発会社に業務を丸投げするのではなく、業務改善のイメージを明確に持たなければならないこと、及び、表計算ソフトやマインドマップで要望を整理する方法が共有された。また、発注側の現場が、要件をまとめる段階でITシステム導入後のイメージを持つことの重要性が認識された。

3.議論のまとめ

① ITを提供する側の在り方:「組織内にはシステムを活用できず、必要性について理解しない人が一定数いる」という認識を欠いたまま、読まれもしない分厚いマニュアルや、使い勝手の悪いシステムを提供してはいないか?
→対応:単に機能を作るだけでなく、顧客が直面する課題解決に役に立ち、顧客が使いたくなるようなシステムを提供するべき。そのために、顧客の業務を深く理解するとともに、例えば客先に開発会社の役員を常駐させるなど、一丸となって課題に取り組む姿勢が求められる。
② ITを導入する側の在り方: 導入するシステムを、実際に、誰が何のためにどの様に使うのかがイメージできておらず、ベンダー任せになりがちとなっていないか?
→対応:ビジネスモデルや業務のイメージを作るところから現場を巻き込み、目的意識を共有することが必要。
③ 組織運営の在り方:問題が発生した際、欧米のように個人の自己責任で片付けることができず、組織全体(集団)に対する責任追及がなさせる傾向が見られる日本において、如何にイノベーションのためのリスクをとれるようにするのか?
→対応:単に欧米化、即ち個に責任をとらせることが適切で最善の解決策とは言えない。日本にもチーム・ワークといった強みはあるため、技術でカバーできない部分は保険をかけるなど工夫を要する。

4.グループ・ディスカッションを振り返って~

○ ディスカッション終了後に各自記入したアンケートに刻まれた各人の想いは以下のとおり(抜粋)。
・ITベンダー、取締役、学生、官公庁、それぞれの立場があり、学びが深まった。
・ITというワードがバズワードであり、そもそもの前提が共有されていないまま議論が進むということが見られた点から、ITを議論することの難しさを実感しました。加えて、ITの導入の難しさを世代が異なる方がいたからこそ、体験することができて良かったです。
  ・日常生活で出会うことのない異業種の方と議論をする機会を得ることができ、大変貴重な時間をすごすことができました。今回のグループテーマはITですが、私は専門家ではありませんが、ユーザーとしてもっと自身のニーズを明確化し、伝える準備をすることが全体のコミュニケーション不足を解消する1つの術ではないかと思いました。

5.おわりに ~ケース・プロバイダーの気づき~

ITの導入は重要であるものの、それ自体がゴールではなく手段である。複雑で絶えず変動する現代の業務に合わせたITを導入するのは非常に高度な要求となり、導入をする側の負担が大きい。そこで今年から「IT業界の産業革命」を自ら標榜するプロジェクトを立ち上げた。これはIT化の仕事の実績を定型化することで第二、第三の事例へと広めていくものである。今回のように出会った仲間と意識を共有し、学習しながらトライアンドエラーで挑戦し続けたい。
(以上)

文責:川合淳一


  



グループ4 : 母となって、父となって、働くこと、そして生きること 〜草の根からの男女共同参画社会への実現に向けて〜

ケース・プロバイダー : 斎川貴代(所属:IT企業)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれと問題意識の共有~

○ 冒頭、10名のグループ・メンバーがそれぞれ名前、所属、趣味、ディスカッションに向けての問題意識を共有。

○ メンバー構成はケース・プロバイダー(IT企業)に加え、弁護士1名、高等学校教諭1名、会社員等7名(医療・医薬品関連企業2名、外資系自動車メーカー1名、電子・電気機器メーカー2名、IT企業1名、監査法人1名)。

○ 男女比は、女性6名、男性4名、年齢層は20代4名、30代4名、40代1名、50代1名。既婚者1名、未婚者9名。国籍は1名はインド、9名は日本。働きながら育児をしているロールモデルが組織にいないため、それらの認識を深めたいという方や、既に子育て経験があり奮闘した経験を持つ方等、本テーマに関する経験値も様々。

2.問題意識の明確化 ~仕事と子育ての両立について、日本における“課題”はどのようなものか。

○ まずケース・プロバイダーから問題意識の共有と、マクロの視点から各種統計データ(育児休暇取得率の各国比、家事の時間の男女比等)や行政・企業の施策、男女の意識に関するアンケート結果が共有された。
それに基づき、各参加者から、育児休暇を取得できないような雰囲気を持つ組織の経験談や、逆に育児休暇が取りやすく現在ベビーブームだという企業の話等所属組織によって多種多様な状況の共有がされた。

○ 議論の途中で、「そもそも結婚後も仕事を続けたいか」という根本的な問いかけが男性参加者からあり、肯定/否定両方の意見があったが、専業主婦を希望する参加者から「今のままの長時間労働で家事と育児を続けるのは厳しいため」という意見や「残業がたくさんあるわけではないが、仕事の内容が、定年まで働きたいという気持ちが起きないため」という意見が挙った。さらに、「専業主婦になりたいと思ったのはいつか」という問いかけに「社会人に実際になってみてから。学生時代はバリバリ働き続ける気持ちでいっぱいだった」というコメントも。
→両立ができないような勤務時間、仕事内容等、社会のデザインが男性向けになっている可能性が日本では否めないことがチーム内で共有された。

○日本では海外と比較すると、女性としての意見を求められたり、女性が上司等になると風当たりが強くなったりといった女性が特別視される傾向にあるが、一人の“人”として認識され、尊厳されることで、個として持つ才能が有効活用されるという議論がされた。

○人口の50%は女性。日本では6割の女性が結婚、育児により退職している事実を鑑みると、単純に考えても6割ほどの人が活用されないままとなっているという事実も認識すべきという意見も挙った。
→新たに生まれた疑問:先進国であり財政面でも発展途上国と比較するとまだまだ安定している日本でなぜ他国の良い事例を取り入れられないのだろうかという疑問が沸き起こった。

3.議論のまとめと今後のアクション〜自分がこれからできること何だろうか?

議論を通して出てきたキーワードは、「周りとのコミュニケーション」と「自分の意識の変革」。具体的には以下である。

(1)周りとのコミュニケーション:企業内の制度や、家庭内での役割分担について、何か課題を発見した時に、企業であれば会社の上司や同僚等、家庭であれば、パートナーとよく話すことが大切であるということ。
(2)自分の意識の改革
①「育児休暇が取りにくい」もしくは「家事と家庭との両立が難しい」と考え、行動を止めているのはもしかすると自分かもしれない。先入観や組織の雰囲気によって自分で自分の限界を作ってしまっている可能性がある。ただ課題や不満を言うのではなく、例えば「育児休暇を取ることで、自分がどのようなメリットを会社に提供できるか」をきちんと組織に提示していくことが大切である。
②また、「男性が育児のメインプレーヤーになる例」や「育児休暇を終えた女性社員を、育児を通して得た能力を評価しマネージャーに昇格する例」等、先入観にとらわれない新しい考え方や施策等も生み出していく柔軟さが大切である。

4.グループ・ディスカッションを振り返って~

○ ディスカッション終了後に各自記入したアンケートに刻まれた各人の想いは以下の通り
・様々な方が社会で活躍していることを実感。自分も現場で頑張ろうと思った。
・まさに自分の問題として制度に魂を込めようとする皆さんの意見に勇気づけられた。
・新しい多様な観点を得ることができて刺激的だった。
・自分にとっての当たり前の世界も他人にとっては当たり前ではなく、アプローチを変えれば、1歩進めるという可能性があることがわかった。
・見て見ぬ振りをしがちだけど、すぐに自分の問題として重要になってくる今回の話題について、違う環境、視点から議論することができ、社会の仕組み、自分たちの意識を変えていかなければならないことがわかった。
・自分が不安に思っていたテーマであったため、今回の議論で元気がもらえた。
・参加前は、女性が圧倒多数かと思いきや、男性の建設的な意見が多数出て、心強かった。
・様々な価値観に触れ、特に「女性」としてではなく「人間」として考えるという視点が面白かった。

5.おわりに ~ケース・プロバイダーの気づき~

議論を終え、自分の中での漠然とした「仕事と家庭の両立について、何かしなければ」ということから、「そもそも、自分自身が壁を作っていた」ことに気づき、「何か物事を良い方向に動かすには、相手のメリットを考え、提案していくこと」というシンプルだけれども、大切な点に気づくことができ、明日の行動に活かしていこうと思う。
(以上)

文責:斎川貴代



グループ5 : 「官僚はなぜ叩かれる?」~官僚は本当に悪なのか?

ケース・プロバイダー : 城真範(独立行政法人産業技術総合研究所)


1.概要

1 参加者
省庁職員、省庁内定者、業界団体職員、私立大学事務職、企業技術職、NGO 団体職員、学生(2 名)、就職活動中、独法職員(ケースプロバイダ兼ファシリテータ)計10 名の班であった。6 名が初参加であり、全体のうち女性は2 名であった。
2 大まかな流れ
ディスカッション大会2 日前よりメールにて順次各自の簡単な自己紹介を共有した。当日は、開始20 分ほどで全員が簡単な自己紹介。発表者と書記を決め、スケジュールについて周知。「官僚は叩かれているのかどうか」についてコンセンサス(官僚は叩かれている)を得たあと、それを前提として1 時間程度順に公平に話す機会をもつよう留意しながら、自らの体験、それについての意見等を自由に語って頂いた。1時間程度経過したあたりで中間まとめをした。その際、官僚、メディア、国民それぞれの課題点と改善提案が参加者より提示されたので、当該参加者にも発表に参加してもらうことにした。官僚の労働実
態が共有され、「官僚が弱者ではないか」というコンセンサスが生まれた。全体共有(発表)ののち、連絡用に作ったメーリングリストのその後について若干の話し合いを持った。
本テーマについて以下の意見が共有された。

2.参加者の意見(抜粋)


1 官僚とはなにか? 叩かれているのか?
・ノンキャリアとの差は?
若手の時は仕事に差はなし、30 過ぎると国会説明等の仕事が入り責任も大に。そして出世スピード、給与も変わる。
・なぜこのような制度(キャリア、ノンキャリアの差)があるのか?
明治の国づくりのためには必要だった、それが現在でも温存されているのでは差自体は悪いことだとは思わない。
・官僚それ自体が叩かれているのか、それとも政策の背景にある存在として叩かれているのか、2種類ある。
・褒められる記事が少ないのは?
マスコミ的にそれでは売れない→返していえば、「叩けば売れる」 では、それはなぜ?

2 なぜ官僚叩きがあるのか? 受けるのか?
・我々は官僚が褒められているのを見るのが嬉しくないそもそも、官僚は僕(しもべ) なのだから、よく働いたら、"よしよし"すべきでは?
・叩きやすいからでは?→それはなぜ?
役所は個人ではなく、ポスト、組織のみが見えるから。顔が見えないと叩きやすい。当たり障りがない存在として叩かれ役になっている。ドラマによる印象操作もあるのでは?

3 官僚は叩かれて当然? 官僚がやっていることとは?
・叩かれること自体は全て悪いわけではない。実際問題もあり、国民がそれを知ることができるから。
・チェック機能は重要で、その役割がマスコミにはあるが、国民はそれをマスコミに任せきりになっているのでは?
しかし、国民は全部を自分たちでやることはできないので、マスコミの役割が重要。
官の方で分かりやすく伝える努力をしていないのも問題では?
ある意味、マスコミに頼っている感がある(ex:記者へのレク、誤報でも指摘しない)、国会=国民として国会ばかり向いていて国民の方を向けられていない。
こうした情報に対する誤解すれ違いは、結局色々なことが複雑だから起こるのでは。

4 どうなれば、すれ違いがなくなるのか
・制度が複雑
中央省庁改革、公務員制度改革、行政の効率化、小さな政府による一元的な対応が必要。ただ、簡単にするのが難しい分野もあるのでは?
でも、そもそも国民はそんな高度な次元で叩いているのではないのでは?
・官僚が権力を持ち、あらゆる特権を享受しているという認識メディアはこうした側面ばかりを伝えている(ex:天下り、身分保障etc...)
しかし、多くの官僚は労働者としては、実は"弱い存在"なのではないか?
・理解しようとしないで叩いている国民の多くは、行政がどのように動いているかについて理解していない。
・でも、Crossover に集う人もまた「国民」であり、ではどうするのが良いか?
メディアの情報を疑うこと、自分で考えることが重要。
リテラシーよりもさらに根本にある、いわば民主主義の基礎を理解するような教育が重要では?

※本稿は書記担当の参加者S 氏の議事録を参考にしました。ありがとうございます。
(以上)

文責:



グループ6 : 縦割りの弊害克服には何が必要か?~霞が関と永田町の現場から~

ケース・プロバイダー :
武木田雅大(所属:外務省)


1.グループ・メンバーの顔ぶれ

○ メンバー構成はケース・プロバイダー(公務員)に加え、国家公務員1名、地方公務員1名、会社員2名(都市銀行1名、マスコミ1名)、教師1名(国立大学所属)、学生1名(米国留学・経営系)。

2.ケースの提供~「縦割り」現象と霞が関における特徴

○冒頭、ケース・プロバイダーより、以下について説明。
① 霞が関での勤務経験を通じた「縦割り」についての個人的な経験の紹介
② 「縦割り」現象を分析する視点(役割分担・専門性・総合調整機能)
③ 霞が関における「縦割り」の特徴(分担管理の原則、人事・会計・法令面での独立性、役割分担と専門性の不一致、「鉄のトライアングル」の遠心力、総合調整機能の不足・分権化)
④ 縦割りの弊害を克服し、「国家国民のために働ける仕事」を目指すうえでのケース・プロバイダーの取組

3.身近に感じる「縦割り」とその問題点

○自己紹介を兼ね、各メンバーより「縦割り」に関する体験や問題意識について発言。
・「縦割り」は機能分担と同義であり、弊害が生じるのは設計図の誤り。
・政権交代後など「今までと異なることをやろう」とした際に問題が顕在化しやすい。
・公的部門に関わらず自分が所属する大組織でも同様の問題。横断的な組織の設立が一つの解決策。
・古い価値観・情報共有不足が壁。異なる3つの部門が連携して進めたプロジェクトが全く進捗しない。
・右肩上がりでなく取捨選択の時代に入り弊害が目立つようになってきている。
・自分の組織では「縦割り」の弊害を感じない。あらかじめ役割分担をきちんと決めておくことは必須。
・自分が関わっていた政官学連携プロジェクトはトップが交代した瞬間に停滞。リーダーの重要性を認識。
・大学(特に人文系)の領域では研究分野の細分化が進行し骨太な研究が減少。特に理系と比べ競争力減退。分野を超えまた社会との連携を進めるプロジェクトを推進中。「横断人材」の育成がカギ。
・米国では州政府と連邦政府の権限分担が非常に縦割り(大麻取締等)。他方で陸海空軍を統べる横断的なJoint Forceのような成功例も存在。

4.縦割り克服に向けた解決策①~制度面

○続いて「縦割り」を制度面から捉え、その解決のため用いられる「横断的組織」が機能する条件等について議論。
・ミッションの明確化。(ex.「まちづくり」=抽象的、共有困難 ⇔「高齢者の買物支援」=具体的、共有容易
・同様に責任の所在の明確化も重要。そして最終的には組織を率いるリーダーの資質が決定的要素。
・自分の組織では財務企画部の巻き込みが成功に繋がった。財政当局の巻き込みが重要。(ex.経済財政諮問会議)
・市民にとっては「どこが担当か」は無関係。企画調整課が「原課の意見を尊重する」という姿勢では困る。

5.縦割り克服に向けた解決策②~意識面

○続いて「縦割り」を意識面から捉え、解決策について議論。
・「縦割りの弊害克服」よりも「国家国民のために働ける仕事」を如何に実現するかに思考の重点を置くべき。
・コミュニケーションの円滑化のための「物理的な壁の撤廃」が重要。(ex.アップル新本社計画、東大柏キャンパスIPMU棟(らせん階段)、Google本社、ぶち抜きの大部屋)
・Informalなコミュニケーションが発生する工夫が必要。(ex.タバコ部屋のひそひそ話、管理職の社外ネットワークの構築(executive manager講座)、自由時間割当て(google、勤務時間の20%)、SNS等)

6.グループ・ディスカッションを振り返って~

○ ディスカッション終了後に各自記入したアンケートに刻まれた各人の想いは以下のとおり(抜粋)。
・自分と同様の問題意識を持っていらっしゃる方が多いことに勇気を抱いた。
・職種に偏りがなく良い班に恵まれた。仕事が違っていても共通の考えが見いだせた。
・縦割りの弊害克服に向けた具体的な方策や、問題の本質に迫ることができた。

7.おわりに ~ケース・プロバイダーの気づき~

「縦割り」は組織一般に見られる現象であり、制度面でも意識面でも克服のための手段や方策については官民問わず相当程度問題意識が共有されていると感じた。今回の議論の成果を踏まえ、今後は霞が関における「縦割り」固有の特徴について更に深く分析することに力点を置いて、自身の活動に活かしていきたい。
(以上)



  



グループ7 : 社会・時代のニーズにあった医療従事者を育てること-医療側への皆さんの期待-

ケース・プロバイダー : 田中健一(所属:北京天衛診療所)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれ~

○ メンバー構成は、ケースプロバイダー(歯科医師)・会社員5名・医師1名・学生2名

2.ケースプロバイダーの問題提起~

問題提起:
35歳女性、家族は夫に3歳の子1人の家族構成、顎の腫れのため知人の勤務する病院を受診、2度の検査をするものの腫脹は陽性(悪性ではない)だった。そのため通常通りの手術でその腫脹部を摘出し、検査をしたところ悪性、つまりガンだった。さらにガンの中でもその種類のガンの発生頻度が1%以下のマレなものだった。私の知人は、この患者にガンに転移があると、生死に直結するので、自己負担を伴うものの、ガンの転移の検査をすすめた。
しかし、この患者は金銭的な理由から検査を受け入れようとしない。この知人からどうしたものでしょうか?という相談をもらった。あなたが担当医であったらどのように対処しますか?まずはこれをcase studyとして議論を始めた。

3.議論の流れ

医学の枠を超え、文化的側面が色濃く反映しています。まず、だされた意見は「患者を説得する」ことです。それに対して「患者の意思を優先する」とする反論もだされました。さらに、情報に非対称があるため「予防教育を推進する」や「人間関係を作るよう話し合いを継続する」といったように各人各様の意見がでました。前の2論は現在まさに行うべき対応であり、後の2論は未来に行う対応です。
さらに、善きことをなす、倫理的に正しいことをする、という意見がだされたところで、それではこの場合の善きことは具体的にどのようなことなのだろう、そして、その善きこととは患者と医師の間で同じことなのだろうか?という根源的な問いもだされました。同じといえば、同じ医療職であっても、職種により善きことが異なる、という意見もだされました。
糖尿病の患者に対して、生活環境や食習慣の改善により体質改善を試みる管理栄養士と、食べたいものを制限までして体質を変えるより、薬物の服用に頼って苦痛を与えない、という医師との間で一つの疾患であっても対応が異なる場合が間々あるという意見もだされたのです。

4.グループ・ディスカッションを振り返って~

今回のケースについて、

1.説明した後は患者の意思を優先する
2.患者を医師が善かれと考える方向に説得する
3.人間関係を作るよう話し合いをもつ

など立ち位置が全く異なった中でも、予定調和にならず、自分の意見を言えることがcrossoverの良いところだと改めて認識しました。医療従事者を養成する教育が、他職種と比較して異なった土台に立っているのでは、という意見がファシリテーターとして出ることを期待したのですが、それはでないままで議論は終えました。
考え方の相違は受けてきた教育に由来するのでは、という論点にはっきりと持ち込めないまま議論が終えたので、改めてファシリテーターの難しさを認識した今回のディスカッション大会でした。

5.おわりに ~ケース・プロバイダーとしての気づき~

1.一つのケースにしても非常に多くの見方があるということ。
2.現場だけで答えのでないものに対して、より広範囲に情報を発信すれば、様々な答えが戻ってくるということ。
3.世代の枠を超えて、フラットな立場で話し合いができるということ(当初、世代間に埋められないギャップがあるのではと思っていたので)
(以上)

文責:田中健一



グループ8 : イイ企業ってどんな企業? 〜地域経済の担い手は、地域の中小企業〜

ケース・プロバイダー : 田中宗介(所属:経済産業省)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれと問題意識の共有~

○ 冒頭、7名のグループ・メンバーがそれぞれ名前、所属、趣味、ディスカッションに向けての問題意識を共有。

○ メンバー構成はケース・プロバイダー(国家公務員)に加え、メーカー勤務や金融・保険業界、ポスドクまで様々。

2.問題意識の明確化 ~社会人、企業人としての「やりがい」は何か。

○ まずケース・プロバイダーから問題意識の共有と、関連する資料(日本の経済・社会構造の変化や、地域経済における中小企業の経済的役割等)や地域社会に貢献する中小企業の事例を紹介した。

○ 参加者からは、自身の経験や所属企業との関係から、「雇用を守る企業が良い企業ではないか」「長く事業を続けている企業は、一定の付加価値を生みだし、適度な利潤を確保しており、良い企業ではないか」といった意見が出された。一方で、企業の厳しい実態もあるのではないか、という意見も出された。例えば、「中小企業が将来を考える余力を失っている」「地方では会社を興す環境が弱く不利」「既存の流通網に後から参入しにくく、敏腕経営者も少ない」といったもの。

3.議論のまとめ

○ 議論を通して出てきたキーワードは、「付加価値」「やりがい」「教育」。
→ 「付加価値」
安定的な企業経営や、継続した雇用の場の創造のためには、利益確保が必要。そのためには、イノベーションを起こし、付加価値を生み出す必要がある。そして、付加価値を生み出せること、その付加価値で社会に貢献できることが企業の存在意義。
→ 「やりがい」
イノベーションを起こし、付加価値を生み出すためには、人材がカギ。与えられたことをこなすのではなく、自ら考え・動く人材が付加価値を生み出すはず。そして、経営者は、従業員のモチベーションを作ることが最大の仕事。
→ 「教育」
人材の生まれるところは「教育」であり、個性やチャレンジ精神が育まれる場でもあるはず。しかし、日本の教育制度は閉鎖的で一本道的ではないか。学び直しや起業など、本来、いろんな選択肢があるはずなのに、「従業員になる」が多すぎる。こんな雇用に意味があるのか。やりがいを感じ、付加価値を生み出せるのか。就職したって、1社目はどこでも良いのではないか。合わなければ辞めれば良い。

4.グループ・ディスカッションを振り返って~ 

○ 異業種・異分野で日々活躍するからこそ、生まれた意見に、今回も「気付かされた」。一人で考えていては決して出会うことの無い意見、知見、経験談。
(例) カトリック教徒にとって、「仕事=罰」。仕事がやりがいになるという考え方は、欧米では受け入れられないのかも知れない。ただ、契約関係だけで仕事をしていれば、日々のカイゼンが生まれるようなイノベーティブな職場を作り出すことは難しいのではないか。だからこそ、グーグルやフェイスブックのようなクリエイティブな会社は、職場環境もコミュニケーションが自然に生まれるようなものにするのではないか。

○ 参加者の受け止め方(アンケートの記載事項(抜粋))
・「仕事のやりがい」について、そもそも定義が明確でなく「やりがいを持てる環境作り」が重要だと認識できた。
・自分で工夫をして、「やりがい」を見つけなければならない。
・議論が発散的になったが、3つのキーワードから更に深掘りができると良かった。
(以上)

文責:田中宗介



グループ9 : 業務効率化でのチャレンジ ~現状維持からでは新しい価値は生まれないのでは~

ケース・プロバイダー : 田中里沙(所属:横浜市)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれと問題意識の共有~

○ 冒頭、9名のグループ・メンバーがそれぞれ名前、所属、趣味、ディスカッションに向けての問題意識を共有。

○ メンバー構成はケース・プロバイダー(公務員)に加え、団体職員1名(福祉系)、会社員等6名(コンサル1名、外資系メーカー1名、元メーカー1名、製造・販売業2名、研究職1名)、学生1名(政治経済学部)1名。

○ 職業の多様性に対し、メンバーの所属では、ITシステムの活用による効率化、品質保証・効率化等このグループのテーマに関連する方も数名。

2.問題意識の明確化 ~業務効率化での課題は何か。自分ごととして考えると?

○ 行政改革・業務効率化とは、ハードな行革(事業見直しや借金削減等)に加え、ソフトな業務効率化(利用者の利便性を高めるためにベストパフォーマンスで業務を効率的に行う)があり、後者を議論。

○ プロバイドケースの具体例:全国の地方公共団体のICTを活用した業務効率化の例(検討中を含む)
①タブレット活用:紙媒体を電車データで持ち歩くことでペーパーレス化が可能となることや、タブレットの各種アプリを活用し、従来用いていた各種機能(例:測定、写真、情報共有等)を1つの媒体で対応することでコスト削減や事務の効率化を達成。
②クラウド活用による情報共有:在宅医療の例では紙媒体では2者間でしか情報共有できなかったが、クラウドを活用し複数の医療従事者が同一の患者の診療情報を共有し、効率的に治療やケアを可能とする。
→ 取組み易いと思われるかもしれないが、慣れている紙媒体の方を好む、現状の業務フローを変えたくないといった意見がある。

○ 業務効率化とは何か。組織はなぜ業務効率化が求められるのか、現状維持からの転換を阻む壁は何か、自ら取組むことができることは何か。

○ ケース・プロバイダーから参加者へのクエスチョン
①あなたが、所属する組織で感じる業務効率化すべきことは何ですか?
②そこであなたができることは何ですか?

3.議論のまとめ

① 業務の属人化:非効率な例として、部署別採用や専門性が求められる業務の場合、業務が属人的になり、代替性が効かない、又は部署がまたがるプロジェクトの場合効率的に進め難い。
→対応:人事交流やマニュアルの引継ぎをしっかり行う、業務内容(フロー)の数値化、見える化を行う。
② 紙文化:日本は印鑑文化があり紙への信頼が強いため、電車決裁等の電子化が導入されても、紙での確認を行っていて非効率。
→対応:文化の壁を認識し意識改革を行い、サイン&電子証明を取入れる等の行動に移すことが必要。
③ ICT化の促進:なぜICTを活用した業務効率化を進めるためには。
→対応:各人が当事者意識を持つ、明確なビジョンと定量化したメリットを関係者で共有する。
      働きかけ役がKey personを巻き込み、問題意識を共有する(face to faceが大事)。

4.グループ・ディスカッションを振り返って~

○ ディスカッション終了後に各自記入したアンケートに刻まれた各人の想いは以下のとおり(抜粋)。
・もう少し問題の本質に切り込んで議論を展開できれば良かった。
・まずは、文化に疑問を持つ、なぜその文化があるか考える事が業務効率化の一歩になると感じた。
・自分自身の意識の持ち方や考え方をしっかり明確にして、今後の会社での取組に行かしていきたい。
・企業や団体によって様々な壁があることが改めて分かった。

5.おわりに ~ケース・プロバイダーの気づき~

官民の分野は違えど共通する課題や解決手法があり、各人がテーマを自分事として捉え考えられたのでは。不足点としては問題の本質に関する議論であったことを問題意識として、明日の行動につなげていきたい。
(以上)

文責:田中里沙



グループ10 : イノベーションを起こす国とNGOの協働~

ケース・プロバイダー : 柚木理雄(所属:農林水産省/芸術家の村)


1.導入 ~グループ・メンバーの顔ぶれと問題意識の共有~

○ 9名のグループ・メンバーがそれぞれ名前、所属と現在の活動、参加した理由や問題意識を共有。

○ メンバー構成はケース・プロバイダー(公務員)に加え、NPO職員、研究者、教員、経営者、会社員、学生と多様。一方で、バングラデシュに縁のある者が過半数の5名という構成。

2.話題の提供 ~イノベーションを起こす国とNGOの協働って?~

○ 芸術家の村では「人・場・金」を整え、持続的な活動の実現を目指している。

○ 芸術家の村で実際に活動をしてみて感じたこととしては、要件の厳しい補助金で政策目標を達成するのも重要だが、がんばったNGOを表彰するなど、イノベーションを起こすNGOのやる気がでるような支援がほしい。お金もかからないので、幅広く支援し、自主性を尊重してほしい。
→ 阪神大震災、東日本大震災、三重県、バングラデシュ、農業などの具体的な事例を交えて議論。

3.議論のまとめ

○ 国とNGOの役割。国は大きな制度を作ることができる。NGOは国の手が届かないようなことができる。

○ NGOが国から補助金を受けると、国の影響を受け、本来目指していた活動ができなくなることがある。一方で、補助金を受けるために様々な要件を満たそうとすることで、NGOの組織が整う場合もある。

○ 当初はNGOの活動と国の目標と合致していなくても、NGOが事例を作り国の制度になることもある。

○ NGOは事例を作る。国は、事例を作る支援をし、事例を集め、制度を作る。

○ 規制がイノベーションを促すような場合もある(サッカーは手が使えないから足技が発達)。

○ 国際的には、ソフィアスタンダード(何人いるからトイレは何個必要のような基準)も作られている。

4.グループ・ディスカッションを振り返って~ 

○ ディスカッション終了後に各自記入したアンケートに刻まれた各人の想いは以下のとおり(抜粋)。
・自分のよりしたいことができる「道」があるのだと気付かされた。
・グループ内でのディスカッションが拡散したので最後の発表が難しかった。
・じっくり話をする、聞くが重要であると実感。
・様々なバックグラウンドをもった人と具体例を含めた議論ができて充実していた。

5.おわりに ~ケース・プロバイダーの気づき~

様々なバックグラウンドをもったメンバーとの議論で、具体例も含めて大変勉強になった。今回の議論では、国とNGOのみを取上げたが、企業や地方自治体等も含めてさらに議論をしてみたい。
(以上)

文責:柚木理雄


Page top

Copyrights © Crossover Network All Rights Reserved,