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官と民の壁、職種の壁、年齢の壁・・・
私たちの身の回りにある様々な目に見えない「壁」をCross-overし、
多様な「人財たち」がより良い社会の実現に向けて協働するきっかけを創り出す触媒、
それが官民協働ネットワーク Crossoverです。
     






PIPDとは   PIPDセミナーの開催実績と今後の予定   PIPDリポート


Platform for International Policy Dialogue (PIPD)とは

PIPDは、官民協働ネットワークCrossoverがNPO法人ZESDA(日本経済システムデザイン研究会)と共催で立ち上げた、国内外の政治・経済・社会問題についての議論を楽しむ政策対話のプラットフォームです。

毎回平日の朝に、在東京の大使館、国際機関、あるいは研究機関等で活躍するその道の専門家をゲスト・スピーカーとして招き、テーマに関するプレゼンテーション、質疑応答、そしてディスカッションを行っています。

なお、PIPDは司会、プレゼンテーション、質疑応答まで全てを英語のみで行っておりますが、英語での発信力、吸収力、そして議論のファシリテーション力を高めようという意欲を持った方であれば、現状の英語レベルにかかわらず、どなたでも歓迎しています。

参加をご希望の方は、 Crossoverへの会員登録 会員登録 をお願いします。会員専用のメーリングリストを通じて、セミナーの詳細をご案内いたします。


PIPDセミナーの開催実績と今後の予定

PIPD主催のセミナーは原則、月に2回、会議スペースを借りて実施しております。
各回の議論の概要は、以下よりご覧いただけます。

なお、PIPDセミナーで使用した資料及びスピーカー及び参加者の発言内容については、ご本人の明示的な許可を得ることなく、メディア(私的なブログやウェブサイト、e-mailを含む)への引用、転載、転送することは厳禁としておりますので、ご理解とご協力をお願いします。

予定/日程 ゲスト・スピーカー ディスカッション・テーマ 報告
2017/03/11 第33回 Ms. Lucy Birmingham & Dr. David McNeill 3.11 Disaster ~ 6 Years on ~ Foreign Journalists' View
2017/02/11 第32回 Ms. Avena Tan What does “Global Jinzai” mean? – think together with a young professional from Singapore
(グローバル人材ってなに?~シンガポール出身の若きプロフェッショナルと一緒に考える~)
2016/12/10 第31回 Mr. Alberto LaPuz
ギャラップ・ジャパン社 ゼネラルマネージャー
Discover Your Strengths!
(あなたの強みを発見せよ!)
2016/11/11 第30回 Dr. Robert D. Eldridge
法政大学 沖縄文化研究所 国内研究員
元米国海兵隊太平洋基地政務外交部次長
2016年米国大統領選を理解する
(Making sense of the 2016 U.S Presidential Election)
2016/10/29 第29回 Mr. Jim Clifton
ギャラップ・ジャパン社 会長兼CEO
世界の職場改革~女性の大躍進~
2016/07/15 第28回 Dr. Robert D. Eldridge
法政大学 沖縄文化研究所 国内研究員
元米国海兵隊太平洋基地政務外交部次長
沖縄問題の真実 ~米国海兵隊元幹部の告白~
2016/06/24 第27回 Mr. Charles Spreckley
People Make Places 創始者、トラベルコンシェルジュ
人が場所を作る~ 「上質」が日本の観光ビジネスの鍵
2016/06/01 第26回 Professor Mark Kennedy
ノースダコタ大学学長
ビジネス・政策環境を形成する”shapeholders”を特定し、彼らを取り込んだ戦略をつくる
2016/04/27 第25回 Ms. Deborah Ann DeSnoo
フィルム&ビデオ・ディレクター、舞台演出家、シナリオライター、プロデューサー
エンターテイメントの力 ~異文化コミュニケーション力を強化するには~
2016/04/01 第24回
Mr. Najib El-Khash
ジャーナリスト(シリア出身、Risala Media Production、Arab Asia Network代表)
シリア問題の現状と行方~日本人に何が出来るか? -
2016/03/23 第23回 Mr. Royce Lee
留学生協会事務局長、東京大学卒業後4月より三菱商事勤務予定
日本経済・社会における外国人の役割
2016/03/04 第22回 Dr. Jiban Ranjan Majumder
バングラデシュ大使
日本とバングラデシュの歴史的関係と今後の可能性
2016/02/17 第21回 Mr. Christopher Winship
米国財務省財務官
米国大統領選挙について
2016/01/18 第20回
Dr. Nancy Snow (京都外国語大学教授)
Mr. Benjamin Boas (慶応大学研究員兼フリーランス翻訳家・通訳)
日本の対外ブランディング戦略 ~2020年とその先を見据えて~
2015/12/14 第19回 Mr. David McNeill
ジャーナリスト(Economist誌、Japan Times、NHK World等)
日本の報道の自由は大丈夫か? ~独立ジャーナリストの視点から~
2015/11/25 第18回 Mr. Jerome Camier
日欧産業協力センター 防衛産業専門研究員
日本は本当に武器輸出国になれるのか?
2015/11/13 第17回 Ms. Jessica Webster
在東京米国大使館 経済・科学技術担当参事官
技術革新がもたらすシェアリング・エコノミー
2015/07/14 第16回 Ms. Jennifer L. Friedman
Council on Foreign Relations、International Affairs Fellow in Japan、米国議会下院歳入委員会 社会保障分科会担当 民主党副部長
米国の医療保険改革-オバマ・ケア-について -
2015/06/30 第15回 Mr. Michael Kawachi
カリフォルニア州弁護士、コロンビア大学ロースクール招聘教授、国際調停トレーニング・プログラム(International Mediation Training Program)専務理事
説得力~あなたは、ビジネス・公共政策・私生活における困難な論争で、如何に人を説得できるか?~
2015/06/10 第14回 Dr. Nancy Snow
慶応大学メディアコミュニケーション研究所 訪問教授
日本政府の広報外交のあり方について
2015/05/26 第13回 Mr. Ichiro Fujisaki 藤崎一郎 氏
上智大学特別招聘教授/国際戦略顧問/元駐米全権特命大使
21世紀の日米関係
2015/05/15 第12回 Mr. Izzet Yerdes
トルコ財務省 経済参事官
今年のG20における課題と日本への期待(注:今年トルコはG20議長国)
2015/04/17 第11回 Dr. Michael Lacktorin
山梨学院大学国際リベラル・アーツ学部学部長
グローバル社会に真に貢献できる人材を創るには?-リベラル・アーツを学ぶことの重要性-
2015/03/27 第10回 Mr. Benjamin Boas
慶応大学研究員兼フリーランスの翻訳家・通訳
クール・ジャパンを世界に効果的に発信するには?
2015/03/13 第9回 Mr. Richard Oppenheim
英国大使館 環境・エネルギー担当部長
気候変動交渉の行方
2015/02/25 第8回 Mr. Patrick Newell
TED×Tokyo 創設者
創造力とイノベーションについて
2015/02/07 第7回 Ms. Bibi Voyles
米国大使館 経済担当補佐官
移民問題を巡る議論について
2015/01/28 第6回 Mr. Evan Mangino
米国大使館 農業担当専門官
遺伝子組換え作物について
2015/01/14 第5回 Ms. Thu Nguyen
米国務省軍事/安全保障専門官
日米防衛協力の指針見直しを巡る議論について
2014/12/10 第4回 Mr. Abdul Matin Sheikh (Maheen)
E-Educationプログラム創設者/Bacbon foundation代表
バングラデシュ農村部に起こった教育革命
2014/11/26 第3回 Dr. Rene Duignan
EU代表部エコノミスト/青山大学大学院客員講師/映画監督
自殺予防に向けた終りなき戦い -
2014/11/13 第2回 Ms. Roshni Nirody
キャロライン・ケネディ米国大使特別補佐官
女性の社会進出促進―ウーメノミクスーへの期待と課題
2014/10/22 第1回 Mr. Giovanni Ganelli
IMFシニア・エコノミスト
アベノミクスの展望と課題


PIPDリポート


第33回 3.11 Disaster ~ 6 Years on ~ Foreign Journalists' View

Ms. Lucy Birmingham & Dr. David McNeill
2017/03/11

3月11日(土)に開催した第33回PIPDセミナーは、Lucy Birmingham氏とDavid McNeill氏のお二人をゲストスピーカーとしてお招きしました。お二人は日本で活躍するジャーナリストで、TIME誌を始めとする様々な雑誌、新聞に記事を掲載されており、東日本大震災の時も多岐にわたる取材活動を展開、いち早く東京電力福島第一原子力発電所を含む東北3県の被災地を訪問し、地震・津波の被害を受けた様々な方々から当時の経験やその後の想いについて丁寧な取材を重ねてきました。そして、2016年12月に、その中から特に6人の方のストーリーをまとめた「雨ニモマケズ: 外国人記者が伝えた東日本大震災」という本を共著で出版されています。

東日本大震災から6年目となるこの日、お二人からは「雨ニモマケズ」で取り上げたストーリーを中心に、「3.11 大震災から6年~外国人ジャーナリストの視点~」をテーマにお話しいただきました。

満員御礼となったセミナーの冒頭では、参加者皆で、震災の犠牲になった方々や被災地の方々に想いを馳せるべく、1分間の黙祷をささげました。そのうえで、スピーカーのお二人は、非常に印象的な写真とともに、共著「雨ニモマケズ」の登場人物である6人の方々を紹介してくださいました。

◆1人目:桜井南相馬市長
まず、McNeill氏から南相馬市長の桜井勝延氏が紹介されました。南相馬市では、人口のほとんどが域外に避難し、お年寄りや貧しくて車が無い人々だけが取り残されました。そして、様々な物資が不足しているにもかかわらず、原発からの距離が近い南相馬市にはメディアが入らず、その窮状が伝えられることはありませんでした。そこで、桜井市長はYouTubeで窮状を訴え、助けを求めることで、この難局を乗り越えました。

◆2人目:相馬市の漁師、イチダさん
McNeill氏は続いて漁師のイチダさんを紹介されました。地震発生直後、多くの漁師は津波の到来を予想し、船で沖に出ようと試みました。なかには間に合わず、港付近で高さを急激に増す波に飲まれて亡くなった方も少なくありません。イチダさんも同じように船に乗り、高さを増した波頭をぎりぎりで乗り越え、危機を逃れました。McNeill氏は、「イチダさんから、震災・津波の体験を語ってもらうのは簡単ではなかった」と振り返ります。何度も断られながらも繰り返し接触したのちに「一度だけなら話す。ただ、一度きりだ」との条件で話をしてくださったそうです。この点について、アイルランド出身のMcNeill氏は、「アイルランド人漁師は自分の経験を何度も繰り返し話したがるし、その話は繰り返す度に誇張されていくものだ」とお話ししながら、日本の漁師との気質の違いを感じた、というお話をされました。

◆3人目:福島第一原発で働くワタナベさん(仮名)
McNeill氏から、3人目として原発で働く20代の若者、ワタナベさん(仮名)が紹介されました。ワタナベさんとは、駐車場で偶然出会ったそうです。ワタナベさんは双葉町で育ち、父親も原発で働いていたそうです。原発事故後、ワタナベさんは既に避難していましたが、使命感から発電所に戻り、危機対応に当たったそうです。しかし、非常に危険な仕事にもかかわらず、賃金は事故直後の最も線量が高かった時期でも月給40万円、その後は30万円程度と、十分とは言えない水準であったことを紹介されました。

◆4人目:夫をなくした陸前高田市のセツコさん
Birmingham氏からは、まず辛い経験を共有してくれる人を探すことは非常に困難であったことが話されました。McNeill氏が紹介した漁師のイチダさんが多くを語りたがらないように、トラウマ的な体験や親族の喪失といった悲しい経験をした方は、そのことについて喜んで話すということは当然ありません。

4人目として紹介されたセツコさんも、夫を津波によって亡くし、また、そのご遺体も中々見つからなかったそうです。震災一週間後、セツコさんはご主人のご遺体と学校の体育館で対面、その体は綺麗に洗われた後、火葬されました。Birmingham氏は、アメリカでは遺族であっても遺体を直接看取ることはなく、そのまま葬ることから、日本との文化の違いを感じた、と話されました。

◆5人目:東松島市の小学校教師、デイビット・チュムレオンラートさん
Birmingham氏は次にテキサス州出身のタイ系アメリカ人の小学校教師、デイビット・チュムレオンラートさんのストーリーを紹介されました。当時、体育館に多くの人々が避難していましたが、津波は体育館に浸水、水位は3メートル以上の高さにある時計のところまで迫ったそうです。避難していた方々は、体育館の2階部分にあるバルコニーにしがみつき、何とか難を逃れたそうです。チュムレオンラートさんは、当時の様子について一度メディアからインタビューを受けたそうですが、珍しい外国人被災者ということもあって、その後取材の依頼が殺到したことから、漁師のイチダさんと同じようにそういった露出を避けるようになったとのことです。しかし、Birmingham氏は知り合いの伝手でチュムレオンラートさんとコンタクトをとることができ、お話を聞くことができたそうです。

◆6人目:荻浜町の18歳(当時)サイトウさん
最後に、Birmingham氏は、震災前に家があった場所に立つサイトウさんの写真を紹介されました。サイトウさんの兄と母は、津波に飲まれながらも、かろうじて脱出し助かりましたが祖父を亡くされたそうです。当時サイトウさんは、東北大学への入学が決まっていましたが、家や財産を無くしたため、無事に進学できるかどうか非常に心配だったそうです。しかし、東北大学から金銭的な支援が得られ、無事に入学することができたそうです。卒業後はロボット研究の道に進み、高齢者の運動をサポートするロボットの研究・開発に取り組まれているそうです。

◆震災時の取材活動について
震災、特に福島第一原発周辺に関する取材活動は、多々困難があったそうです。当時、政府は原発及び周辺地域の取材活動を強く規制していました。また、情報開示も不十分であったように感じた、とのことです。
McNeill氏は外国人記者に取材許可を出さない政府や東電に対して、「放射能の問題は日本だけでなく、世界の問題である」と主張し、取材許可を強く求めたそうです。McNeill氏が事故発生直後に自らサイトを訪問した際に撮影した原発の写真の一つである、ロッカールームに敷き詰められた布団の写真からは、当時、原発作業員の方々がおかれていた厳しい勤務環境を窺い知ることができます。
また、飯舘村で取材したある農家の写真も見せていただきました。震災によって畑や家畜を失い、それまで何代にもわたって築いてきた生活は一瞬にして破壊されてしまいました。McNeill氏は、その農家の主であるショウジさんの話を、涙なしに聞くことはできなかったとのことです。

会場からは、震災時の取材時に意識していること、心に留めていたことについて質問がありました。

お二人は、「一度で全て聞くことはできない。トラウマ的な経験をしている方はその経験について話したがらない。だから何度も足を運び、少しずつお話を聞いていくことが大事だ」、「敬意をもって接することが大切だ」と答えられました。
さらに、Birmingham氏は、避難所ではそれぞれの家族がそれぞれ辛い経験をしているため、多くの被災者はその感情を発露させることができない環境にあり、心理的なサポートが必要であるように見受けられた、と振り返られました。Birmingham氏は、被災者の心理的サポートをする活動をしようと自治体に申し出たところ「外国人の助けはいらない」と断られたとのことです。この経験から、ボランティア活動に対する行政の理解を得ることが大変重要、と感じられたそうです。

◆日本のマスメディアの報道姿勢について
 震災当時の日本のマスメディアの良かった点、悪かった点についても質問がありました。McNeill氏は、NHKの報道は非常に冷静で、危機感や恐怖を徒に煽るものではなかった点が良かったと指摘されました。また、震災発生直後に飛ばしたヘリコプターで上空から撮影した津波の映像は、非常にインパクトがあり、世界中で有名であると評価されました。一方、震災後、日本のマスメディアは原子力の「専門家」を連日招いては、原発の実情や想定されるリスクを語ってもらうというより、視聴者に原発への危機感や疑念をできるだけ抱かせないよう腐心しているように見えたこと、こうした姿勢からは、政府、原発業界、大手マスメディアとの間の利害関係が透けて見え、疑わしいものだったと述べました。たとえば、東電が事故発生から2か月後にようやく「メルトダウンが起こっていた」と発表して初めて、日本の大手メディアがその旨を報道したことを指摘されました。
参加者から出された「ジャーナリストの使命とは?」との質問に対して、お二人は、「事実を伝える」ことに加え、「Monitor the power(権力の監視)」が重要なミッションである、と強調。政府や企業の発表を鵜呑みにして報道するのではなく、疑わしい点があればその点を検証して報道することがメディアの使命であると強く主張されました。

◆震災後に生じた変化について
最後に、ゲストスピーカーのお二人から、参加者に対して「震災後に日本は変化したか?変化したとすればそれはどのようなものか。」という問いかけがなされました。約40人の参加者が、4,5人の小グループをつくって話し合った後、会場全体で内容を共有しました。NPOやボランティアに対する関心の高まり、「自分もいつ死ぬか分からない」との気づきから、本当にやりたい仕事への転職を決意された方のお話など、様々な変化が共有される一方、そうした社会的風潮は一時的なものにとどまっているのではないか、との指摘も出されました。

セミナー終了後、お二人の共著である「雨ニモマケズ: 外国人記者が伝えた東日本大震災」を数量限定で販売していましたが、あっという間に売り切れました。この本は、まさにその日の日経新聞において、東日本大震災のリアルな姿を、冷静に描き出している良著として、紹介されていました。

今回は土曜日の開催ということもあり、セミナー後に懇親会を開き参加者それぞれが、震災や津波を経ての想いや活動について共有し、最後まで会場は盛況でした。

今回も株式会社Click Net 社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ 」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。



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第32回 What does “Global Jinzai” mean?

– think together with a young professional from Singapore

(グローバル人材ってなに?~シンガポール出身の若きプロフェッショナルと一緒に考える~)


Ms. Avena Tan
2017/02/11

2月11日(土)の15時から開催した2017年最初の第32回PIPDセミナーは、シンガポールから上智大学大学院へ進学し、日本の大学生と同じ就職活動を経て、日系商社に入社されたAvena Tanさんをスピーカーとしてお招きし、「What does “Global Jinzai” mean? – think together with a young professional from Singapore(グローバル人材ってなに?~シンガポール出身の若きプロフェッショナルと一緒に考える~)」をテーマにお話しいただきました。

なお、今回も株式会社Click Net 社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ 」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。

プレゼンテーションはAvenaさんの自己紹介から始まりました。引っ越しの多い一家で育ったAvenaさんは、中国本土で生まれた後、香港へ移り、何度か引っ越しをしてから、シンガポールへ住むことに至ったそうです。こうした経験は、Avenaさんが後に日本への留学を決意するうえでのきかっけにもなったそうです。
「シンガポール人は、同じ環境で、同じ教育を受けて育つため、同質のバックグラウンドを持つことがほとんど」とAvenaさんは指摘します。そうした中、中国、香港、シンガポールと様々な環境で育ってきたAvenaさんは、他のシンガポール人たちと自分との差別化を図りたいと考えるようになり、多くのシンガポール人が選ぶアメリカやイギリスのような英語圏ではなく、日本に留学することを決めたそうです。数ある国の中でも日本を選んだのは、
① 当時シンガポールの日本人コミュニティに関わる機会があり、そこで出会った日本人の方々に刺激を受けた、
② 日本が東南アジアへ多額の投資を行っていることから、日本企業は自身の経験を活かすことができそうだと考えた、
といった理由があったとAvenaさんは振り返ります。また、Avenaさんは日本の文化にも関心が高く、特に「コタツ」が好きということも、日本を選ぶ決め手となったそうです。

今回のセミナーは、スピーカーであるAvenaさんと昨年夏に2年間の米国留学から帰任したCrossoverスタッフの二宮聖也との対談、そして参加者同士のディスカッションという、これまで以上にインタラクティブな形式で行われました。対談及びディスカッションは、大きく以下2つのテーマに沿って進みました。

【Session1】
What does global Jinzai mean in the Japanese context?
(グローバル人材とはそもそも何か?)

Session1では、「グローバル人材」という言葉に焦点を当て、「そもそもグローバル人材とは何か?」についてAvenaさんと二宮との間で対談を行った上で、参加者同士で「自分はそういう人材か?」、「そういう人材となるには何を変える必要があるか?」という視点で議論を行いました。

対談は二宮からの「なぜ近年、グローバル人材という言葉が話題に上ることが多いのか?」という質問でスタートしました。現在日本の商社に勤務するAvenaさんは、自身の会社を例に挙げながら、海外に多くの支店、支社を持っている日本企業の場合であっても、グローバル人事のシステムがないなど、社内は非常にdomestic(内向き、国内中心)な傾向がみられる点を指摘しました。会社として「現状を変えていこう」という意欲は感じ取れる一方、会社として「グローバル人材」に期待する役割が明確になっていないとも指摘。この点、Avenaさんが上司に「外国人である自分に何を期待しているのか」と尋ねたところ、「日本人のスタッフと同様の役割を果たして欲しい」という返事であったそうです。「内向きな会社の現状を少しでも変えていけるように努力したい」とAvenaさんは笑顔で述べていました。

「グローバル人材を目指す人へのアドバイスは?」という質問に対して、Avenaさんは「“Open Mind(広い心)”を持つことが大切ではないか」と強調されました。また、「そもそも“グローバル人材”という言葉自体、海外では耳にすることがなく、日本国内でばかり語られるはやり言葉ではないか?」と指摘したうえで、以下のように、“グローバル人材”を定義されました。

「日本では、“グローバル人材=英語を話す人”、“海外留学を経験したことのある人”、あるいは“日本にいる外国人”を指すように見受けられるが、海外に行ったことのない日本人でも十分、“グローバル人材”になることができる。」
「私が考える“グローバル人材”とは、英語を話せるといったスキル面に由来するのでは必ずしもなく、変わりゆくビジネス環境、人々の考え方に適応していくFlexibility(柔軟性)、Adaptability(順応性)を持った人材ではないか。」

ここで、対談の内容を踏まえつつ、参加者同士で“What does global Jinzai mean in the Japanese context?What do you need to change?”についてのディスカッションに移りました。約10分のディスカッションでは、「海外でも日本人同士で固まってしまう傾向」や、「言語だけでなく、非言語面の文化的なコミュケーションの仕方」についても改善が必要ではないか、グローバル人材を採用する戦略を明確にすべきではないか等の意見が活発に出されました。

【Session2】
How should individuals change to create a better workplace for both foreign and Japanese workers in Japan?
(私たち「一人一人」はどのように変わっていくべきか?)

Session2では「グローバル人材であろうとなかろうと、今後、日本人が外国人と共生していくことが求められる社会において、私たち一人一人がどのように変わっていくべきか」をテーマに議論を行いました。初めに、Avenaさんが日本で過ごす中で感じた日本社会へのフラストレーションや葛藤について、モデレーターの二宮と対談を行い、その内容を踏まえ、参加者同士、私たち一人一人が外国人・日本人の双方にとってwin-winな職場環境、コミュニティを創り出すために、どういうアクションをとっていくべきか、そして「私たち」は明日から何ができるか、という議論を行いました。

初めにAvenaさんから、自身の日本の企業で働く中で感じた葛藤について共有頂ききました。歴史ある日本の商社で働くAvenaさんは、「日本人らしくあること」と、「外国人らしくあること」のバランスを失わないように常に気をつけているとのことでした。つまり、日本企業の本社で働く以上、日本社会に適応していく必要がある一方、自分は「完全な日本人」にはなれず、また周囲からも「完全な日本人」として扱われない中で、外国人としてのバックグラウンドを活かすためにどう振る舞うべきかを考えている、とのことです。

そうした中で、自身が「外国人であること」を周囲に認識してもらい、また、完全に日本人と同様に振る舞うことはできないことを理解してもらえるように努めている、とのことです。例として、社内では、ほとんど敬語を使わないようにしていることを挙げていました。敬語を使っても日本人のような「正しい」敬語ではなく、違和感を与えてしまう、外国人が使っていたら軽く笑われるだけで済むが、日本人が使っていたら間違いなく注意されるような表現になってしまうために意図的に避けていると話していました。一方、日本社会に順応しようと、コーヒーを淹れる、コピーをとる、デスクの掃除等、日本人の新入社員、特に女性が会社の風習として行っていたようなことは積極的に行うことを心掛け、また日本人が行う立ち振る舞いについては常に観察し、勉強しているそうです。他方、そうした日本の文化に順応する姿勢を見せながらも、「“自身はあくまで外国人である”と示すことは忘れないようにしている」と強調されました。

日々、暗黙のルール(protocol, unwritten rule)に気を付けながら生活しているというAvenaさんの話を踏まえ、モデレーターの二宮が、アメリカ留学の際に、自分が初めて社会的少数者(social minority)となったことをきっかけに、同じマイノリティである外国人学生によるグループを組織しアクションを起こした経験を述べた上で、参加者に「How should individuals change to create a better workplace for both foreign and Japanese workers in Japan? What can you do from tomorrow that will make a difference?」と質問を投げかけました。Session1に引き継ぎ、このディスカッションでも各チームで白熱した議論が行われました。

「外国人のスタッフと会話をするきっかけにまず挨拶をしよう」
「日本人、外国人がそれぞれコミュニティを作ってしまう傾向があるので、コミュニティ外でのコミュニケーションを行う」
「外国人(スタッフ)もより日本語を学ぶようにする」

こうした意見が飛び交う中、「普段は英語を話す機会があまりなく、英語に自信がない」というある参加者が立ち上がり「自分に何ができるか考えた結果、まず、この場で勇気を出して英語で意見を発信することから始めたいと思った」という声を会場に響かせました。Session1の議論でも指摘された「まず、自分のmind-setを変えていく」、という「グローバル人材」へのステップを越えていく光景に、多くの人が印象付けられました。

セミナー終了後には、ソフトドリンクとお菓子を用意した懇親会の時間を設け、約40名の参加者及びスタッフがそれぞれ親睦を深めつつ、本セミナーの議論を振り返り、熱い議論を続けました。



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第31回 Discover Your Strengths! (あなたの強みを発見せよ!)

Mr. Alberto LaPuz (ギャラップ・ジャパン社 ゼネラルマネージャー)
2016/12/11

12月10日(土)の16時から17時30分までの時間帯で開催した第31回PIPDセミナーは、Gallup日本支社のゼネラルマネージャーを務められているAlberto氏をスピーカーとしてお招きし、「あなたの強みを発見せよ!」をテーマにお話しいただきました。Gallup社は、世論調査で有名な米系コンサルティングファームであり、第29回PIPDセミナーではCEOのJim Clifton氏をお招きし「世界の職場改革~女性の大躍進~」をテーマにお話しいただいていました。

また、今回はAlberto氏がご厚意で、ウォールストリートジャーナルのベストセラーである「Strength Finder2.0」を参加者に1冊ずつプレゼントしてくださいました!この本の巻末に添付されたコードを使うと、34の特性の中から、自分の強みとなるトップ5の強みを知ることができるテストを受けることができます。また、テスト終了後には特定された「5つの強み」にさら磨きをかけていくために日々心がけるべき習慣のリストや、「5つの強み」に磨きをかけることで達成が期待できる成果についてまとめたレポートを読むこともできます。

今回のセミナーでは、「強み」を知ることがなぜ重要なのか、また、そもそも「強み」とは何を指すのか、といったことを中心的なテーマとしてお話しいただきました。

◆「強み」を知ること◆
冒頭、Alberto氏は、強みを知ることがなぜ重要なのか、説明されました。自分自身はもちろん、自分のすぐ近くにいる人や一緒に働く人の「強み」を知ることで、お互いを補完し合いながら、全体として高いパフォーマンスを生み出すチームを作り上げることができるとのことです。例えば「Command:指揮・命令ができること」は強みですが、同じ強みを持った人間ばかりが集まったチームでは、パフォーマンスを発揮しにくいが、異なる強みを持った人間を組み合わせたチームを作ることで、それぞれの「強み」によってお互いの弱点を補完するチームを作ることができるということです。

さらに、「強み」を知ることの重要性について、以下のような例で紹介してくださいました。それは、本を読むスピードが速い人と普通の人に対して速読の方法を教え、それぞれのグループの本を読む速度がどれだけ向上するかを比較する実験です。速読の方法を習う前から速いペースで読む人は、改善幅も小さいだろうという予想を覆し、そうでないグループの人々と比べて、大幅に向上幅が大きいという結果が得られたそうです。この実験は、「強み」となる資質は、そうでない資質よりも大きく伸びる可能性があるということを示していると思われます。

◆「強み」とは何か◆
次にAlberto氏は「強み」とはそもそも何なのか、について説明してくださいました。多くの人は、「強みとは、優れた身体能力や容貌といった外に現れる特徴である」と考えがちですが、Alberto氏は、「内面に宿るものである」との考えを示されました。ここで言う「内面」とは、例えば、自分自身が意識することなくとる行動や、自分自身の日々の行動の原因となる動機などであるということです。
「Strength Finder2.0」に登場する34の「強み」は、まさにこういった内面的傾向に当たるものです。これらの「強み」は、Gallup社の創業者であり心理学者でもあったDon Clifton氏が、ビジネスにおけるパフォーマンスを左右する要因を調査することを通じて特定したとのことです。例えば、年齢や経験に関わらず、売上が高いグループとそうでないグループがあり、それを左右する要因は何か、という観点から調査したそうです。

なお、どのような強みであろうとも、そのこと自体に正解も間違いもないということです。Alberto氏自身は、「Strength Finder 2.0」のテスト結果に「戦略性」や「分析思考」といった戦略コンサルタントに必須と考えられる強みがなかったことに落ち込んだこともあるそうですが、現在では「学習欲」、「最上志向」、「達成欲」、「親密性」、「責任感」という相互に関係する一貫した自分の強みにとても満足しているそうです。

◆いかにして「強み」を知り、磨きをかけるか◆
では、私たちはいかにして自分自身の「強み」を知り、磨きをかけていくべきなのでしょうか。Alberto氏は、「強み」の元となるものは、「資質(Talent)」であると説明してくださいました。ここでいう「資質」とは、鋭い頭脳や優れた身体能力のことではなく、自然に生じる思考、感覚、行動を指すということです。例えば、気軽に人に話しかけることができること、順序だった形で物を考えることができること、忙しさを求めること、そして自ら行動を起こすことなども、「資質」になると紹介してくださいました。そして、「資質」は、それを認識した上で様々な場面に適用させることを通じて、「強み」へと変化させることができるとのことです。

Alberto氏によるプレゼンテーションの途中で、「自分自身の「強み」をどうやって見つるか」をテーマに参加者がペアになって英語で議論をし、結果を会場全体で共有するセッションを持ちました。その結果、「自分自身が自然に楽しめることは何かを考える」や、「自分自身の過去を振り返る」、「自分が達成したい目的から逆算する」といった考えが紹介されました。

こうした議論の中で、Alberto氏からは、「強み」に対する両親の影響についてもコメントがありました。両親の志向や行動は、幼い頃の生活や体験に大きく影響するため、その結果として、日ごろの思考や行動、そして「強み」に対しても影響し得るということです。Alberto氏自身の「強み」の一つには「学習意欲」がありますが、これはAlberto氏の母親が教師であったことも強く影響していると感じられているそうです。

「Strength Finder2.0」のテスト結果を参考にしつつ、自分が自然と楽しいと感じるもの、自分自身の過去の行動、両親からの影響なども探ってみることで、自分自身の「強み」をより深く知ることができると思われます。

◆「強み」の文化性について◆
Alberto氏は、プレゼンテーションの中で、各国ごとの「強み」のランキングを紹介してくださいました。興味深い結果としては、リーダーに備わっているときに大きな強みと考えられている「Command: 指揮・命令ができること」が、特にアジア諸国においては下位に位置していることが挙げられます。また、日本と中国において「協調性」が上位に来ていたのも特徴的でした。

また、「Strength Finder2.0」の34の強みはアメリカで開発されたということもあり、多くの日本人が美徳して捉える特性、例えば、謙虚さ、忍耐力、及び利他性といった項目がないという指摘がありました。この点について、現在Gallup社では、「Strength Finder2.0」を各国の文化的な背景も加味した新たなバージョンを作るために内部で議論しているということでした

日本人が「強み」と捉える特性として挙げられ議論を盛り上げたのは「オタク」です。日本の製造業は細かいものを作る技術や、さらに物を小さく作る技術に優れていますが、そういった「細部への注意力」は強みなのではないか、という意見が出されました。

この点について、Alberto氏からは、自身が若かりし頃に交番のお巡りさんがとても親切だった話を紹介しながら、細部に対する注意力という意味では、製造業のみならず、サービス業においても同じようなことが言えると述べてくださいました。細部への拘りは、「おもてなし」という言葉に通じる部分もあるかもしれません。

今回は、セミナー終了後に同じ会場でクリスマス会を開催しました。

Alberto氏からはとても素晴らしいワインの差し入れもいただき、約40名の参加者とAlberto氏で、交流を深める時間を持ちました。

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第30回 2016年米国大統領選を理解する(Making sense of the 2016 U.S Presidential Election)

Dr. Robert D. Eldridge
(法政大学 沖縄文化研究所 国内研究員、元米国海兵隊太平洋基地政務外交部次長)
2016/11/11

11月11日(金)の7:30から9:00までの時間帯で開催した第30回PIPDセミナーは、第28回セミナーで「沖縄問題の真実―米国海兵隊元幹部の告白― 」をテーマにお話いただいたDr. Robert Eldridge を再度ゲスト・スピーカーとしてお招きし、「2016年米国大統領選を理解する(Making sense of the 2016 U.S Presidential Election) 」をテーマにお話し頂きました。なおDr. Robert Eldridgeは、在日米軍沖縄海兵隊司令部の元高官であり、現在、沖縄問題を中心に様々なメディアを通じて出版、執筆、翻訳活動を展開されています。

冒頭、Eldridge氏は、「自分は昨年の今頃、まさかトランプとヒラリーが共和党、民主党の大統領候補となるとは予想していなかった。しかし、トランプ勝利という大統領選の結果自体は、私にとって驚きではない。

彼女の敗北は実は、民主党の候補者を決定する7月のPrimary(予備選)で既に決まっていた。なぜなら彼女は、対立候補であったバーニー・サンダース氏の票を、不正に横取りしたからだ」と静かに、しかし、はっきりと所見を述べられました。その上でEldridge氏は、「自分はトランプ、ヒラリーのいずれも支持しておらず、二大政党のどちらにも与していない」と、ご自身のポジションを明らかにされたうえで、今回の大統領選挙の結果をもたらした要因について、以下のような見解を示されました。

◆ 一般市民の不満と高まる反エリート主義:
まず、アメリカの一般市民が政府に対して極めて高い不満を持っていること、にもかかわらず、都市部で活躍するエリート層が、市民の不満に対してあまりに鈍感であることを挙げられました。例えば、現在アメリカでは、1%の人間が99%の富を保有し、50%の子どもが貧困状態にあり、69%の家庭が1,000ドル未満の貯蓄がないそうです。中間層も縮小の一途をたどっています。
こうした状況において、縁故主義(cronyism)的手法で公的地位を濫用して私腹を肥やしているとみられたヒラリー氏への一般有権者の嫌悪感は高まっていったとのことです。また、7月に行われた民主党の予備選挙において、ヒラリー陣営が民主党執行部の一部と結託し、サンダース氏の選挙運動を妨害したり、不正に投票を操作したりしたことを示す大量のEメールでのやりとりがWikileaksによって暴露されたことも、「やはりヒラリーは既存のシステムを濫用する汚職にまみれたエリートである」とのイメージを強めたそうです。
こうした中、「“反知識人”、“反エリート”を標榜したトランプは、その精神的不安定さや政治家としての経験値の浅さ等にもかかわらず、“まだましな候補”として最終的に勝利をおさめたと考えられる」。Eldridgeはこのように選挙結果の背景にある米国社会の状況を紹介された上で、「トランプ氏の乱暴な言動は一般大衆のフラストレーションを、ある一面では代弁していると見ることができる」とも指摘。この点に関して著名な映画監督であるマイケル・ムーア氏が、「トランプは既存のシステムに投げ込まれた人間爆弾だ」と表現したことを紹介されました。また、御自身がトランプ氏の出身であるニューヨーク州の隣であるニュージャージー州の出身であることに触れながら、「おどしやハッタリを織り交ぜたトランプ氏のしゃべり方や態度は、特にその地域の中高年の男性たちに典型的に見られるものなのだ」、という興味深い指摘をされました。なお、Eldridge氏が先月高校の同窓会に参加した際、同級生に対して「誰に投票するか」と尋ねたところ、10人中7人が「トランプ氏に投票する」と答えたそうです。

◆ アメリカの二大政党制の機能不全、そして既存権力とメディアの結託:
今回の選挙は、“酷い(mean)トランプ”と、“悪い(evil)ヒラリー”との争いであったという評価があります。そして、アメリカの有権者は、“mean”と“evil”の間で選択をしなければなりませんでした。実際、多くの世論調査で、ヒラリー、あるいはトランプを支持する最大の理由として、「相手の候補者が嫌いだから」が挙げられていました。この点、Eldridge氏は初代大統領のジョージ・ワシントンが「二大政党制が我々に与える選択肢は幻想(Illusion)となりかねない」と警鐘を鳴らしたことを紹介し、「正に現在のアメリカ政治は、共和党と民主党がコインの裏表のように一体で違いがなくなってきており、有権者に意味のある選択肢が与えられていない状況となっている」と指摘されました。

併せてEldridge氏は「特に主流派メディアは都市部に根ざしており、都市に住む高い教育を受けた一部の人間の声しか代弁できていない。こうしたメディアは、平均的なアメリカ人、つまり、地方に住む高い教育を受けていない多くの層の現状や心情を分かっていない。それどころか、見下している傾向すら見受けられる」と批判されました。またCNNやその株主であるTime Warner社、コムキャストやNBCテレビ等、主流メディアの多くが、ヒラリー陣営に多額の政治献金を通じて肩入れしていたこと、このために選挙予想や報道や偏った、そして誤りの多いものばかりになったと強調。そして「日本のメディアの米国に関する報道は、アメリカの偏ったメインストリームのメディアの報道をコピーしているものばかりだから、日本に現状は正しく伝わらない」と指摘されました。

◆ 選挙制度を巡る問題点:
ヒラリーの全米での得票数がトランプを上回ったにも関わらずトランプが勝利したのは、米国の殆どの州で、過半数の「選挙人(Electoral Collage)」を確保した候補者が、全ての「選挙人」を総取りできるという選挙制度が理由であるとEldridge氏は指摘されました。そのうえで「公平性の観点から問題がある既存の選挙制度は、将来、より比例代表的な制度に変わるかもしれない」と述べられました。但し、単純多数決の積上げ方式には、人口が相対的に少ない州の声を大統領選に反映し難くなる、という問題があります。この点、Eldridge氏は、ネブラスカ州が採用している「Constituency System」、即ち、州を区分けした選挙区ごとに「勝者総取り方式」で選挙人を割り当てるという制度を現実的な妥協案として紹介されました。但し、この制度にも、影響力のある候補者が、自身に有利になるように恣意的に選挙区の境界線を決めてしまう、いわゆる「gerrymandering」のリスクがあるようです。

Eldridge氏は「アメリカは二大政党制であると言われるが、実は20もの政党がある」ことを紹介されました。例えば、内科医のジル・スタイン氏が率いる「Green Party」や、元ニューメキシコ州知事のゲーリー・ジョンソン氏を大統領候補に指名し、小さな政府を徹底的に追及する政策で戦った「Libertarian Party」」等が挙げられます。これらの政党には熱心な支持者が少なからずいるものの、一般には殆ど認知されていません。これには「少なくとも5回の主要な世論調査で15%の支持を集めた候補者だけが公開討論に参加する資格が与えられる」といった参入障壁や、メディアの偏向報道が影響しているとEldridge氏は指摘されました。

◆ 米国有権者の今後の課題:
Eldridge氏は、今回の選挙によってアメリカ社会の分断が明らかになるとともに広がってしまったことに懸念を示された上で、「我々は今後、“アメリカ人”として連帯しなければならない」と強調。その上で、トランプ氏の言動にはファシスト的要素が見られると指摘した上で、「結託する既存エリートによる支配を終わりにしたいという、民主主義の弱体化を防止するための今回の行動が、民主主義の更なる弱体化を招くことがあってはならない。新しい大統領が誤ることがあれば、我々が教え、誤り続けるようであれば、しっかりと拒否の意志を示すことが必要だ」と力強く伝えられました。また、こうした状況で重要なこととして、「有権者の選挙への参加率を高めていくこと」であるとEldridge氏は力説されました。この点、現在米国の登録有権者の割合は、若年層及び低所得者層で低迷しており、18-24歳の有権者は46%、年収3万ドル以下の労働者については37%しか有権者登録をしていないそうです。

また、前述のように、メインストリームのメディアはもはや大衆から信用されておらず、身近な存在ではなくなってしまっていることを踏まえ、これからは一人一人がオルタナティブなメディアの影響力が高まるように行動し、二大政党以外の政党を育てることが必要である、とも指摘されました。そして、「アメリカの政治を立て直す上で、個人的に最も重要と考える課題は、大企業による政治献金の規制である」と強調され、プレゼンテーションを締めくくられました。
 
◆ 質疑応答:トランプ新大統領の今後の政権運営について
「トランプは共和党有力議員からもかなりの批判を浴びていたが、今後の政権運営は可能なのか」との質問に対してEldridge氏は、「お互いにしばらくは心理的に居心地の悪い思いをするかもしれないが、二年後の中間選挙での勝利に向けて、協働していくだろう」と答えられました。また新トランプ政権は、上下両院とも共和党が多数派を握ることから、政権運営はむしろスムーズとなり得ること、また、最高裁判所の判事の現状の構成が、保守派4名、革新派4名、空席1名となっている中、トランプ氏が保守的な傾向のある候補を指名し、上院がそれを承認すれば、最高裁も保守的な傾向が強まる可能性があると指摘されました。併せて、「孤立主義外交」を標榜するとみられているトランプ新大統領は、米国による近年の他国への軍事干渉に疲弊している軍部からはむしろ歓迎されるのではないか、との見解も示されました。

また、トランプ新政権における閣僚メンバーや補佐官人事に注目が集まるところ、特に日本大使については、安全保障のスペシャリストが就くことが望ましい、との意見が示されました。この点、トランプ氏は前回訪問時のバブル期の日本のイメージを持っており、「お金があるにもかかわらず基地負担についてはただ乗りしている」というイメージを持っているのではないか、との見方も示されました。この点、日本とアメリカの距離感についても、トランプ氏の言動はぶれが大きく、常に緊密な距離感を取ろうとすると、振り回されることとなると思われるため、アメリカとの距離感の取り方についてはよく考えるべきとのことでした。

最後まで質問が尽きることなく、議論が大きく盛り上がる中、今回のセミナーは幕を閉じました。

なお、今回も株式会社Click Net 社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ 」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。

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第29回 世界の職場改革 ~女性の大躍進~

Mr. Jim Clifton (ギャラップ・ジャパン社 会長兼CEO)
2016/10/29

10月29日(土)の16:00から17:30までの時間帯で開催した第29回PIPDセミナーは、Gallup社のCEOであるMr. Jim Clifton をゲスト・スピーカーとしてお招きし、「世界の職場改革~女性の大躍進」をテーマにお話し頂きました。

◆ Gallup社について
冒頭、Clifton氏は、1935年に米国の統計学者であり実務家でもあったジョージ・ギャラップ氏によって設立されたGallup社のミッションについて、以下のように伝えられました。
「“民主主義とは人々の意志である”とすれば、誰かが“人々の意志がどこにあるのか”を見出す必要がある。さきほど「PIPDは、政治・経済・社会のIssue(課題)について問題意識を深める場だ」という説明があったが、何がIssueなのか、市民が何を考えているかについて、国のリーダーが取り違えると、むしろ世の中をおかしくしてしまう。」

Gallup社はこうした問題意識の下、様々な世論調査や分析を行い、現在では、米国のみならず世界20カ国に構える30の事務所を通じて、主要なグローバル課題に関する市民の声を政策担当者へと届けています。

◆ 人々の価値観」の変化について
Gallup社が長年行ってきた調査に、「あなたが欲しいものとは?(what you want?)」という問いかけがあるそうです。Clifton氏は米国においては、歴史的に、人々が「欲しい」と考えるものは、自由、独立、平和、家族、そして「良い仕事」へと変化してきたと紹介されました。

この中で、Clifton氏は、「自分にとって、最も大切な、人生の目的といえるものは家族であり、家族がいなければ自分を幸せにはできない」と語られ、「これはベビー・ブーマー世代の特徴でもある」と指摘されました。一方で、2000年以降に社会人になった、いわゆる「ミレニアルズ」は、自分や身近な家族への貢献では足りず、「社会にとって意味のあるよい仕事を出来るか」が重要になってきていることが、統計的に示されていることを示されました。

◆ 仕事を巡る価値観の変化
以上を踏まえ、Clifton氏は、さらに興味深い調査結果を紹介してくださいました。
自分の仕事に対して、意味や意義、すなわち、エンゲージしている者の割合は15%であり、エンゲージしていない者の割合は60%、逆に全くエンゲージしていない者の割合は25%、というデータです。「全くエンゲージしていない」層は、仕事において目的やミッションを感じていないと考えられます。他方、「エンゲージしている」層は、新規顧客の開拓やビジネスの創造をリードする生産性の高い人たちです。
この点、GDPを人口で割ることで示される「生産性」についてみると、アメリカの生産性は、この20年間下がり続けているそうです。また、IPOの数も、2年前は280件、1年前は140件、今年は70件と、毎年半減しています。
Clifton氏は、こうした統計データを示しながら、「仕事の目的やミッションを強く感じられる人間を職場で育てていかなければ、生産性も技術革新も高まらず、結果、GDP成長も低調なままであろう」と警鐘を鳴らされました。

◆ 求められるマネジメントの変化について
Clifton氏は、職場で求められるマネジメントのあり方も、ベビー・ブーマー世代とミレニアルズとで様々な変化が見られると指摘されました。例えば、働き手が仕事に求めるものについては、「給料額」から「目的やミッション」に、「個人的な満足(休暇の長さや福利厚生の手厚さ)ではなく「自己の成長」に変わってきているそうです。

また、上司との関係についても、「一方的に指示や指摘を与える存在」から「自分を育ててくれるコーチのような存在」に、上司と部下とのコミュニケーションについても、「年に一度のパフォーマンス・レビュー」から「日常的・継続的な会話」へとシフトしています。

また個人の成長に当たって重視されるべき点も「弱点の克服」から「強みの把握と発揮」へと変わってきているそうです。ここでClifton氏は、「弱点は強みになることはない一方、強みは人生を通して無限に伸びていく。また、弱点は人に補ってもらう事も出来る。だから、弱点自体は問題ではない」と指摘されました。こうした変化については、会場からは学校教育におけるシステムとも結びついたものでは、という指摘もなされました。

◆ 管理職に占める女性の割合について
続いてClifton 氏は、管理職に占める女性の割合の国際比較のデータを示されました。世界の平均が43%、中国は35%、韓国は28%であるのに対して、日本はわずか11%という結果です。なお、この割合は中東の保守的なイスラム教国であるイエメンと同程度であるということです。また、アメリカは世界の平均と同程度であり、アジアで女性管理職割合が高い国としてタイが紹介されました。

◆ ディスカッション
Clifton氏からのプレゼンテーション終了後のディスカッションでは、特に日本の女性管理職の相対的な少なさとその原因や対応策を中心に、参加者同士のインタラクティブなやりとりがなされました。

「アメリカの管理職に占める女性の割合は、少し前は今の日本と同じような状況だったと思うが、今現在の世界の割合と同程度という状況に至るまでに何が障壁だったのか、女性を管理職に登用していくに当たっての障壁は何か」、という質問に対しては、「男性は女性管理職が増える結果、どのような影響が自身や組織に起こるか分からないため、不安なのではないか」という意見が出されました。他方、こうした不安感は日本男性特有のものではなく、ある程度どの国でも共通している傾向ではないか、という意見も出されました。
さらに、日本の家庭・家計における妻の役割や権限が非常に強いことなど、労働市場とは異なる役割を、社会・家庭で男女が果たしてきたことが指摘されました。こうした傾向を背景に、女性は男性よりも、「家庭か、キャリアの追求か」の選択を迫られることから、将来管理職となるいわば候補者の母数が少なくなってしまっており、結果として管理職も少ないのでは、という意見も出されました。

また、管理職に一定数に女性が就くようにする「割当て制度(Quota制度)」はうまくいくかという質問もなされました。これについては、意図は理解できるが、適材適所の観点からは疑問という意見が出されました。

今回は、1時間半のセミナー修了後も1時間程度、ソフトドリンクとお菓子を用意した懇親の時間を持ち、Clifton氏から示された様々なデータや問題意識をもとに、活発な意見交換が参加者の間で交わされました。

なお、今回も株式会社Click Net 社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ 」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。

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第28回 沖縄問題の真実 ~米国海兵隊元幹部の告白~

Dr. Robert D. Eldridge
(法政大学 沖縄文化研究所 国内研究員、元米国海兵隊太平洋基地政務外交部次長)
2016/07/15

7月15日(金)の朝7:30から9:00まで開催しました第28回PIPDセミナーは、在日米軍沖縄海兵隊司令部の元高官であり、現在、沖縄問題を中心に様々なメディアを通じて出版、執筆、翻訳活動を展開されているDr. Robert Eldridge をゲスト・スピーカーとしてお招きし、「The Truth of the Issue on Okinawa –reported and unreported aspects of Okinawa(沖縄問題の真実-報道される沖縄、されない沖縄」をテーマにディスカッションを行いました。

Dr. Eldridgeは、ご自身が沖縄問題と向き合う際の基本的姿勢を、静かに、ゆっくりと、そして力強く語ることでプレゼンテーションを始めました。
「私が日本で暮らし始めて26年になる。この間、沖縄駐留の海兵隊幹部として7年間同地に勤務した経験を含め、20年以上に亘って沖縄の基地問題と向き合い続けてきた。そして今でも自分が愛する沖縄のことを考えない日は無い。」

「この間、私は常に「真実」を追究してきた。これには「熱意」だけでなく、事実を志向する科学的・客観的姿勢が大切だ。感情的になりすぎれば事実を損ね、事実ばかりを見ていては人々の感情を忘れてしまう。」

その上で、Dr. Eldridgeは「私の今日の話は、一つの結論を皆さんにかみ砕いて(spoon-fedで)伝えようというものではない。今日の話を材料として、ご自身でよく考えて頂きたい」と参加者に伝え、沖縄基地問題の「報道されない」側面を考える上でのキーワードと、たくさんの写真を紹介していきました。

Dr. Eldridgeは、沖縄は基地問題を巡って、いわゆる「保守」も「革新」も、「白か黒か」のレッテルを張りあい、互いの主張に耳を傾け合う状況にないこと、圧倒的なシェアを持つ地元二紙以外のメディア情報が限られる中、沖縄の基地とは直接の結びつきが希薄な外国を含む県外のグループが政治的思惑と既得権益を持って深く関与することで、問題がこじれ、また歪められてしまっていることを強調されました。

例えば、Dr. Eldridgeが沖縄海兵隊で広報担当を務められていた時、オスプレイ(固定翼機とヘリコプターの特性を併せ持った垂直離着陸が可能な航空機)の沖縄への配備が大幅に遅れましました。これは、危険性ばかりが喧伝されて政治問題化したためでした。しかし、その機能や安全性向上に向けた取組を沖縄県民に対してオープン且つ分かりやすい形で知ってもらうための「オスプレイ・ファミリー・デイ」といった海兵隊主催の取組みに多くの県民が参加してくれたことについては、殆ど顧みられなかったことを紹介されました。

また、喉に食べ物がつまり息ができなくなった時に応急措置で命を救ってくれた若き海兵隊員に感謝状を送った年配の沖縄県民女性や、「平和団体」と称するグループによるアメリカ人へのヘイト・スピーチとも受け取れる活動に心を痛めた米軍兵士やその家族を励ます「Heart Clean Project」活動に励んでいる沖縄県民の方々は、支持や賞賛ではなく、脅迫の対象となったり、脅迫を恐れて身分を隠さなくてはならなくなっているというストーリーを紹介されました。

併せて、Dr. Eldridgeは、「人口密集地に建設された」、「世界一危険な」という標語とともに報道されがちな普天間飛行場について、1945年に建設されて以来、一度も死者を出すような事故が起こっていないこと、宜野湾市人口が建設当時の6,800人から97,000人と十四倍以上に増加しているデータに示される通り、人口密集地を選んで基地が作られた訳では必ずしもなく、人々が様々な理由から基地の近くに住むようになったという事実を示されました。

Dr. Eldridgeは、基地反対派の主な集会には県外からの参加者が相当程度含まれていること、また「主催者発表」の参加者数は、会場となった施設の収容可能人数という客観的な事実に照らしても明らかに過大であるにも関わらず、「沖縄を代表する声」、「沖縄の声が一つになった」という形でメディアを通じて拡散されていくことにも、違和感を覚えると主張。「沖縄にも多様な声がある」という事実がかき消され、基地についての冷静な議論ができないことについて強い懸念を示されました。

そして、沖縄の海兵隊の拠点は、南シナ海をめぐる国際司法裁判所の判決等の動きにより中国による沖縄方面への進出が今後ますます活発になることが見込まれるなかで、日本の平和はもちろん、アジア・太平洋地域や世界全体の安定にとって極めて重要であることを強調されました。また、海兵隊は自衛隊ができない/やらない“3K(危険、汚い、きつい)ミッション”に取り組んでいることに触れつつ、「日本は何をしたいのか」がハッキリしないまま、非生産的議論が続けば、海兵隊が「付き合いきれない」と感じる日が来るかも知れないこと、その場合には、日本はより一層深刻な問題と直面するかもしれないと警鐘を鳴らして、プレゼンテーションを締めくくられました。

Dr. Eldridgeからの重く困難な問題提起に対して、会場からは多数の手が上がりました。「人々が異なる意見に耳を傾け、冷静に議論するための機会はどのようにしたらつくれるのか?」、「何故メディアは一方向に傾きがちなのか?」、「アメリカで大統領交代が予定される中で、米国の沖縄問題に対するスタンスや優先順位は変わりそうか?」等、様々な質問や議論に対して、Dr. Eldridgeは一つ一つていねいに答えて下さいました。

なお、Dr. Eldridgeは、国際性と広い視野を持ったリーダーを育てることを目的として公益財団法人「国際文化会館 」が主宰している「新渡戸国際塾 」の講師も務められています。

日々多忙を極めておられ、且つ、現在沖縄にお住まいであるDr. Eldridgeをゲスト・スピーカーとしてお迎えすることができたのは、これまでPIPDセミナーに参加されてきた「国際文化会館」の職員の方々にDr. Eldridgeをご紹介頂いたためです。この場をお借りして、ご厚意とご縁に感謝申し上げます。

また、今回もセミナー会場に「まなび創生ラボ 」をお貸し頂いた株式会社Click Net 社長の丸山剛様、並びに同社社員の皆様にもお礼を申し上げます。有り難うございました。

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第27回 人が場所を作る ~ 「上質」が日本の観光ビジネスの鍵

Mr. Charles Spreckley (People Make Places 創始者、トラベルコンシェルジュ)
2016/06/24

6月24日(金)の朝7:30から9:00までの時間帯で開催した第27回PIPDセミナーは、海外の主に超富裕層をターゲットに、日本への観光旅行をアレンジするコンシェルジェ・サービス「People Make Places」を創設・運営されているMr. Charles Spreckleyをゲスト・スピーカーとしてお招きし、「People make places – why quality, not quantity is Japan’s best tourism solution(人が場所をつくる-日本の観光業の鍵は「量より質」?)をテーマにディスカッションを行いました。

なお、今回も株式会社Click Net 社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ 」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。

「人は、あなたが言ったこと、したことは忘れる。しかし、あなたにどんな気持ちにしてもらったかは決して忘れない。」(People will forget what you said. People will forget what you did. But people will never forget how you made them feel.)

「人を中心とするアプローチ」を柱としてコンシェルジェ・サービスを提供してきたSpreckley氏は、ご自身が最も影響を受けたアメリカの詩人・歌手であるマヤ・アンジェロウの言葉をプレゼンテーションの冒頭で紹介されました。

「お客様が時々、『何でかよく分からないけれど、凄く幸せな時間だった』と伝えてくれることがあります。私は相手にそう思ってもらうことこそ「もてなし(hospitality)」だと考えています」と語るSpreckley氏は、ご自身が創り上げた書籍そして携帯アプリのコンテンツを織りなす、様々な空間と、その空間を作る人を巡る物語を紹介していきました。

例えば、西麻布交差点近くの「すし匠 まさ」店主の岡正勝さん。四谷の名店「すし匠」の親方で師匠として尊敬する中澤圭二氏の元で修行後、「のれん分け」の栄誉に預かった岡さんは、左利きという鮨職人にとってのハンディキャップを凄まじい努力で克服。今は、7つしかないカウンター席に囲まれながら、師匠の姿勢を受け継いで一つ一つの瞬間に妥協無く挑み続けている・・・。

江戸時代から続く鰻の老舗「五代目野田岩」の金本兼次郎さんは、秘伝のタレを決して絶やさない。地震が起これば自分や家族の身の安全よりも、まずタレの入った壺の無事を確認するために厨房に飛んでいく・・・。

銀座でアート・ギャラリーを構える小柳敦子さんは、「マーケットのために働くのではない。規模を追求するのでもない。小さくとも確かな幸せを誰かに届けたい、そんな想いを持ったアーティストと長く続く関係を創るのが私の幸せです」と語る・・・。

印象的なストーリーと写真でセミナー参加者を惹き付けながら、Spreckley氏は、ご自身が日本で観光業に関わることになったきっかけを共有してくれました。それは全く偶然の産物だったそうです。18歳だったSpreckley氏がバックパッカーとして初めて出会ったアジアは中国でした。その時隣国である日本には、関心を抱くも訪れるチャンスが無かったとのこと。その後ひょんなことから日本に訪れ日本でジャーナリストとして雑誌等の編集に6-7年関わっていました。その間、日本への観光に興味を持つ友人から多数の問い合わせを受けたことから、トラベル・コンサルタントとして独立する道を選んだそうです。

当初は顧客を選ばず安価なサービスを提供していたSpreckley氏でしたが、東日本大震災を経て観光客が一切なくなってしまったそうです。そんな中、その年の後半に、とある中東の王族の家族旅行が彼の元へ飛び込んできました。彼らの望みは、観光客向けに作られた場所を訪れるのではなく、日本固有の独特の体験をすることでした。このお客様をきっかけに、「オンリーワンでプライベートな、そして忘れがたい想い出を日本で得たい」と願う「一日当たり100万円」を使うことも厭わない超富裕層に特化したサービスへと自身のビジネスモデルを転換していったそうです。

Spreckley氏がPeople Make Placesで紹介するのは、たとえ日本語が分からなくても、そこで時間を過ごせば、場を創る職人やアーティストの拘りや人生が伝わってくるような、場所であると言います。開発したアプリ版のPeople Make Placesでは、顧客が「知る人ぞ知る隠れ家的な場所」をタクシー運転手に示す際の助けになる、簡易な日本語でのナビゲーションサービスも付いています。

規模は小さくとも印象的な場所を海外の富裕層顧客に紹介するに当たっての、Spreckley氏の最大の悩みは、顧客が旅程を急に変更して夕食等の予約を直前でキャンセルすること。People Make Placesが紹介するレストランは、上で紹介した「すし匠まさ」のように5―7席のカウンターしかないようなお店が多い。こうしたお店にとって、3-4席の予約の直前キャンセルは経営上のダメージが大きい。しかしSpreckleyさんは、「本当の損失は“お金”ではなく“信頼”である」と言います。レストランの経営者やシェフ、職人さん達は、今宵訪れるお客さんが忘れがたい時間を過ごせるよう、精魂を込めて食材を調達し調理に臨んでいる。「たかがレストランの予約」という発想で安易に直前キャンセルをすれば、こうした想いを踏みにじることになる・・・。Spreckleyさんは、お金には換算できないこうした背景を顧客に説明することで、突然のキャンセルを止めてもらうよう説明を試みているそうですが、なかなか伝わりにくいことが悩みだそうです。

また、最近、日本が「年間2,000万人の外国人の日本旅行者」をターゲットとして国を挙げて「Visit Japan Campaign」を展開していることについて、「数字が一人歩きすることで、“日本を特別な場所たらしめている何か”を失うリスクがある」と憂慮されているとのことです。他方で、京都等のよく知られた観光地が外国人でいっぱいになることは、奈良や和歌山等の近隣の、余り知られていないが素晴らしい土地が、海外の観光客に知られやすくなるチャンスともなる、との期待を示されました。その関連で、和歌山県が独自のツアーガイド資格をつくり、同県に馴染みの深い外国人もこの資格を活用して、外国人観光客が和歌山県を楽しめるよう「水先案内人」の役割を果たしていることが紹介されました。

プレゼンテーションの締めくくりにSpreckleyさんから、参加者全員に、「People Make Places」の書籍が贈られました。アルバムのように立派な本を開くと美しい写真や人々の表情が背景にあるストーリーと共に綴られています。思いがけないサプライズ・プレゼントに会場は歓声に包まれました。

プレゼンテーション後には、「超富裕層のみに焦点を絞ったサービスとする理由」や「コンシェルジェとして仕事をする上での最大の喜び」、「現在の日本政府による訪日観光客増加策を成功させる上での課題」等についての質問が出されました。また、「People Make Places」のコンテンツを充実させるために、参加者一人一人が「特別だ」と感じた「忘れがたい場所」を2-3人でペアとなって話し合い、Spreckleyさんをはじめ会場全体と結果を共有し合うグループワークも行いました。

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第26回 ビジネス・政策環境を形成する”shapeholders”を特定し、
彼らを取り込んだ戦略をつくる


Professor Mark Kennedy (ノースダコタ大学学長)
2016/06/01

6月1日(水)の夜8:00から9:30までの時間帯で開催した第26回PIPDセミナーは、ノースダコタ大学学長のマーク・ケネディ教授 をゲスト・スピーカーとしてお招きし、「ビジネス・政策環境を形成する“Shapeholder”を特定し、彼らを取り込んだ戦略をつくるには?」をテーマにお話し頂き、その後教授から提示されたケースを用いたグループ・ワークを行いました。

ケネディ教授は、ミネソタ州選出の米国下院議員を3期務められ、ブッシュ政権(2期目)及びオバマ政権(1期目)にて通商アドバイザーとして活躍、そしてジョージワシントン大学ポリティカルマネジメント大学院(GSPM)院長として同大学院の発展に多大な貢献をされてきました。今回、ケネディ教授が5月末に数日間訪日される機会を捉え、PIPDスタッフとの特別なご縁から、訪日中のタイトなスケジュールの中、懇親会も含めて、PIPDセミナーに参加頂くことができました。

なお、今回は、会場としてエコッツェリア協会様が運営されている素晴らしい交流施設「3×3Labo Future 」を利用させて頂きました。この場をお借りしてご厚意にお礼申し上げます。有り難うございました。

ビジネスマン、政治家、そして大学教授として多方面で活躍をされてきたケネディ教授が提示する「Shapeholder」というコンセプト。教授はこの耳慣れない言葉を、ご自身で撮影された印象的な写真で織りなされたプレゼンテーションスライドを使って、テンポ良く、そしてとても分かりやすく伝えて下さいました。

■ Shapeholderとは何か?-Shareholder、Stakeholderとの違い-

ビジネスにおいて、株主(Shareholder)や利害関係者(Stakeholder:自社の従業員、取引先、顧客、及び拠点を置く地域社会)と対話をしながら、彼らの声を経営判断に活かしていくことの重要性については、既に多くの人々が認識しているところです。
しかし、ケネディ教授は、「多くの企業人が、自らが直接関わるマーケットの外で、自分たちとは異なる動機で動いているShapeholderの動向や彼らが経営に与える重大な影響については気付いていない」と指摘します。教授が提唱する「Shapeholder」とは、企業経営に直接の利害関係をもたないものの、その企業がマーケットで利用可能な選択肢の広さを形作る(Shapeする)者を指すそうです。例えば、政治の動向、規制の変更や新規導入、メディアの論調、市民活動家のキャンペーン等がこれにあたります。

■ なぜShapeholderが重要なのか?

ケネディ教授は、「ShareholderやStakeholderと異なり、Shapeholderはあなたの企業が失敗しようが、成功しようが、直接影響を受けることはない。しかし、あなたとは異なる動機や価値観で動いている彼らの動向は、あなたの企業が手にできる機会、あるいは直面するリスクに大きな影響を及ぼす」と指摘します。例えば、著名な環境保護団体であるGreen Peaceの動きに鈍感であれば、石炭採掘を営む企業は大きなリスクに晒される一方で、その企業の倒産が直接の原因となってGreen Peaceが倒産する、あるいは業績を高めることはありません。ここでGreen Peaceは石炭採掘産業が操業しやすい(し難い)雰囲気を「Shape」する役割を果たしています。

Shapeholderが企業の業績に与える大きな影響の具体例としてケネディ教授は、マーケティングで大きな成功を世界中で収めているコカコーラ社が、「肥満防止キャンペーン」を展開するNGOの活動により、ボストン市内のあらゆる公共施設で自動販売機の設置が出来ないでいること、アイルランドで500万人のユーザーを持つFacebookが、政府の規制により中国で10億人の潜在的ユーザーに全くアクセスできていないことを挙げられました。

その上で、「市民団体やメディアの声を、『彼らは何も分かっていない』と、あたかも“ノイズ”であるかのように受け止め、ShareholderやStakeholderを満足させることばかりに集中すれば、巨大なマーケット機会を喪失することになるだろう」と警鐘をならされました。
また、ケネディ教授は「Shapeholder」はビジネスにとって重要なだけでなく、NGO/NPO職員、軍関係者、政治家が、それぞれのミッションを追求する際にも、馬鹿にならないインパクトを及ぼすと指摘されました。

■ Shapeholderを特定し、効果的に関与するには何が必要か?

目の前のマーケットや慣れ親しんだShareholder/Stakeholderの動向ばかりに目がいく状況を、ケネディ教授は「トンネルの中にいるようだ(外の世界が見えていない)」と表現されました。その上で、Shapeholderに効果的に関与するためには「視界を開くこと」が重要であると指摘します。具体的には、いきなり解決策を考える前にShapeholderの立場にたった「問いかけ」を考えること、自分の発信するメッセージや市場での活動がShapeholderからどのように受取られるか出来るだけ客観的に予測すること、これらを効果的に実践するために、自社の伝統的なマーケット以外の場所で経験を積んだ価値観の異なる人間を組織に招き入れるといった方法を紹介されました。
その上で、「何よりも重要なのは、立場の違いを超えた仲間をつくること(Assemble)である」と強調され、プレゼンテーションを終えられました。

■ ケース・スタディ:「男性の育児休業取得義務化法案」を可決させるためのShapeholder Management

プレゼンテーション終了後には、教授がお話しされた内容に対する質疑応答に続き、「Shapeholder」について理解を深め、特に「Assemble(立場の違いを超えた仲間をつくる)」ことの重要性、難しさを体験するための、ケース・スタディを通じたグループワークを行いました。

4-5人の小グループを作った参加者に対して、ケネディ教授は以下のような事例を提示しました。
「君たちは、『全ての企業に男性の育児休業取得を義務付ける法案』の成立を目指す議員グループだ。この法案を無事成立させるには、国会の雰囲気を「Shape」し、同志となる議員を超党派でAssembleしなければならない。」

ケースの前提の理解が浸透しているかを確認した上で、ケネディ教授は参加者に対して次の課題を投げかけました。
「まず、この法案を殺す(廃案にする)ことを考える勢力が、同僚議員に投げかけるであろう、最も効果的な「質問」を一つ考えてもらいたい。」

ケネディ教授がプレゼンテーションで強調された「自分が追求するミッション(マーケット)の外にいるShapeholderの視点」に立った「Killer Question」をつくるべく、参加者はグループワークを開始。使用言語はもちろん英語オンリー。活発に議論するチーム、笑い声に包まれるチーム、悩ましい沈黙に支配されるチーム・・・それぞれの回答を配布された紙に記載していきます。

5分後、ケネディ教授の声がけでグループワークはいったん終了。チームの代表が考えついた「質問」を会場全体と英語で共有していきます。
 「Do you want to kill small and medium sized companies(中小企業を倒産させたいのか?)」
 「Do you think this is the only solution to address the issue?(これが本当に唯一の解決策だろうか?)」
 「Why does the government have to intervene in such a private matter(そんな個人的な話にどうして政府が首を突っ込まなければならないのだろう?)
法案を廃案に持ち込むための刺激的なkiller questionが発表されました。ケネディ教授はコメントをしながら各チームのアイディアをホワイトボードに記していきます。

全てのチームの回答が出された後、ケネディ教授は、第二の課題を提示しました。
「今度は逆に、この法案を通す(成立させるにする)ために、あなた方が同僚議員に投げかけるであろう、最も効果的な「質問」を一つ考えてもらいたい。」
会場はさらに活発な議論に包まれ、様々なアイディアが出されていきます。
 「Do you want to deprive young father with the most precious time in their life?」(若い父親から人生で最も貴重な時間を奪って良いのだろうか?)
 「Do you want to see more divorce and fewer kids?」(離婚件数の増加や子供の数の更なる減少を望むのか?)
 「Do you believe it is only woman who should take care of kids?(子供の面倒は女性だけが見れば良いのだろうか?)

 こうしたケース・スタディに基づくグループワークを通じて、ケネディ教授は、Shapeholderマネジメントの要諦である「自分と異なるミッション(マーケット)で動く人々の立場に立つこと」、「解決策を考える前に問いかけを考えること」、そして「広く様々な人々を味方に付けていくこと」の大切さと難しさを参加者が理解する機会を与えてくださいました。

セミナー終了後には、近隣のレストランに共に場所を移し、セミナー参加者全員とケネディ教授とで、教授が愛する赤ワインで乾杯。セミナーを振り返りながら夜遅くまで懇親会を続けました。

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