マルチメディアジャーナリズム:物語りの革命

マルチメディアジャーナリズム:物語りの革命

2018/04/20

マルチメディアジャーナリズム:物語りの革命
Multimedia Journalism: A Revolution in Storytelling

Mr. Mark Austin NHK World, Jiji Press and Tama Graduate School of Business


4月20日(金)午前7時30分より開催された第43回PIPDセミナーでは、スコットランド出身のジャーナリスト兼研究員のMark Austinさんをお招きし、Multimedia Journalism: A Revolution in Storytelling(マルチメディアジャーナリズム:物語りの革命)についてお話頂きました。

Mark Austin氏は、冒頭、メディアの変遷についてお話されました。私たちがニュースを入手する手段は、新聞、ラジオ、テレビ、スマートフォンと、多様化してきています。そして、スマートフォンは、3つのC(Computing:コンピューターとしての計算機能、Communications:コミュニケーション、Content:コンテンツ)というメディア機能を統合する新たなC(Technological Convergence)の一役を担っています。この変化は、ジャーナリズムの在り方に大きな影響を与えているとのことです。

メディア機能の統合は1990年代後半からの業界用語でしたが、特にマルチメディアによる物語りにおける統合(Storytelling Convergence)が注目を浴びています。例えば、ジャーナリストの働き方として、バックパックジャーナリズムというものが登場しています。これは、リポーター、写真家、編集者など、複数の役割を同時に担うジャーナリストのことです。大きなチームとして動くのではなく、ただ一人のジャーナリストが動くため、取材可能な範囲が広がり、また、その報道の仕方も、複数のメディア(テキストだけでなく、写真や映像、音声を含めた)を活用した形、すなわちマルチメディアジャーナリズムと変化しています。

また、通信技術の進歩は、これまでの”聴衆”、つまり聴き手側を、コンテンツを生み出し、拡散する役割へと変化させました。3つのCが4つ目のC(Consumers)と密接に作用することにより、報道の即時性を飛躍的に向上させるとともに、新聞紙の紙面等と異なり、情報量の制限も取り払うなど、大きな変化をもたらしています。

次に、Austin氏は、マルチメディアジャーナリズムの要素についてお話しました。マルチメディアは、テキスト、映像、写真、音声、グラフの5つに、インタラクションを加えたものから成ります。Austin氏は、それぞれのメディアの強みと弱みを解説してくださいました。

①まず、最も代表的で基本的なテキストは、物事を説明するのに適しており、また、現代においては、ハイパーリンクを貼ることで、他のコンテンツにつなげることもできます。一方で、写真や映像と比べると、感情的な要素を伝達することにはそこまで適していません。また、複雑な事項について、グラフなどを使わずに文章だけで伝えるのは困難なこともあります。
②次に映像については、テキストよりもずっと感情的な要素を伝達することに優れています。一方で、映像を観る受け手は、受働的になりやすいという欠点もあります。
③写真は、映像の時代にあってもなお大きな影響力を持っています。情報の受け手は、写真をどれだけの時間見つめるか、どこに注意を払うか、自由に決めることができます。映像との大きな違いです。また、映像と比較して、編集も容易です。ただ、写真は一部を切り取るものであるため、詳細な情報を伝達することは苦手です。
④次に音声は、映像が目と耳の二つの感覚を用いるのに対して、音声は一つの感覚、耳のみを用います。また、映像との大きな違いとして、映像にはどうしても映すことができる範囲に限界がありますが、音声の場合は、受け手側の想像力次第で、限界がありません。また、欠点としては、やはり詳細な説明には向かないこと、聴き取りやすいことが必要であり、さもなければメッセージが伝わらないことなどがあります。
⑤5つ目のグラフですが、テキストや音声では説明に多大な時間を要する概念であっても、よくデザインされたグラフであれば、一目で伝えることができるという強みがあります。このようなグラフが、テキストや映像などの他のメディアと組み合わさることで、メッセージをより強力に伝えることができます。ただし、そのように良いグラフを作るためには、それなりの労力が必要となります。
⑥最後に、マルチメディアの5要素に加えて、Austin氏はインタラクションについて説明されました。ソーシャルメディアの登場により、情報の受け手だった人が、発信する側になるようになりました。しかし一方でこの変化は、私たちは情報の真贋を見極める必要も生じさせました。

その後会場では、これらのマルチメディアの要素を踏まえながら、適切なコミュニケーション手段の選択に関するワークを行いました。仮定された状況下で私たちが何らか発信することが必要である場合、どのメディアを用いてどのように発信するか、参加者同士で議論し、発表しました。お題は、

1.宇宙技術関係会社の社長による1年後の火星-地球間の無人飛行プロジェクトの発表
2.食品会社の広報担当による最近報告された異物混入事例の発表、
3.地方銀行の社長による役員に占める女性の割合を5年以内に50%にするという発表

の三種類でした。それぞれ、説明すべき内容や想定される受け手、期待する効果が異なっており、どのメディアをどのように用いるかを考えるのに最適なお題であり、会場は大変盛り上がりました。

最後に、Austin氏は、ローマ教皇がどのようにして選ばれるかについて、インタラクティブかつ視覚的に知ることができるサイトを、マルチメディア活用の好事例として紹介してくださいましたので、ここにも掲載したいと思います。

http://www.lastampa.it/vaticaninsider/eng/the-vatican/how-a-pope-is-elected

今回も会場提供にご協力頂いた、株式会社クリックネットまなび創生ラボの皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。